職人のPIZZAとチョコ,眺めのよいLOFT
ドーはドーナツのドー
ほかにも良いドーナツ屋さんはあるに違いないが、Dooughのドーナツはおいしかった。アパートメントを去る朝の食事は部屋でBitter SweetのコクのあるコーヒーとDoughのドーナツと大きなパン・オ・ショコラ(Balthazarかハウスメイドか不明)、リンゴはFujiとHoney Crisp、そしてギリシャヨーグルト、ジュース。
ヨーグルトやジュースを買うグロサリーストアは個人経営で、意識の高低が商品に表れている。店の人が楽しそうにしている店はいつもいい感じの空気が流れていて、買いものもリラックスできて楽しかった。コンビニができる前は私たちの街にも、こんなお店があったよな、と思う。
滞在していたタウンハウスの部屋はよかった。撮影不可の決まりで載せられないが、アメリカンフォークアートの絵画や調度品、家主さんのホスピタリティ、かけがえのない体験だった。
Uber(ウーバー)を呼んで最終宿泊地へ。Uberは今回の旅で感動の便利さだった。
Uberとはイエローキャブが走っていないブルックリンなどで、タクシー代わりになる配車サービス。
簡単に説明すると、まずスマホにアプリhttps://www.uber.com/ja-JP/ride/を入れてアカウント登録する。次に、希望の車種を選んで目的地を入れると見積金額が表示されるので、確認してクリックすると自分がいる場所に車が来てくれる。「あと何分で到着します」などのお知らせと共に運転手の名前や顔写真がリアルタイムで届くのです。タクシーと違っていつもきれいな車で。目的地に着いたら支払いはカード引き落としのキャッシュレス。チップ不要。メールで領収書が届く。チップはなくとも降りてから運転手を評価することができるためか、サービスもかなり快適です。ルートがすべて記録されているのも安心で、価格は普通車UberXの場合、NYではタクシーと同じか少し安いかもと感じました。初回無料乗車(上限額は都市によって異なる)できる私からの招待コードは「y9q9v3a2ue」です。登録のときに入力すればよいそう(そうすると私にも特典があるそうな!)です。
前回はインターネットはもちろんスマホもない時代だったから(なんて昔なんでしょう)、さほど不便に思わなかったけれども、今こうして宿泊やレストランの予約や配車や撮影、そして「ここどこ?」までもスマホを頼りにできることを考えると、すごい時代になったものだと思います。
ホテルに荷物を預けてから地下鉄に乗って、Bushwickにある倉庫のようなピザ屋さん、Roberta'sを再訪。入り口がわかりにくく秘密基地のようです(下記参照)。こんどは待たずに入れました。アマトリチャーナ、ロメインレタスのサラダ、もちろんピザも、何を食べてもおいしいお店。
それから近くの、Fine&Rawのチョコレート工場併設のショップへ。ここも倉庫で質実剛健、カジュアルながら高級。ほとんど買いものをしなかったこの旅で、洒落たデザインの板チョコはよいお土産となりました。
Fine&Rawのチョコレートヘーゼルナッツバターは乳製品ではなくナッツの油脂でスプレッドになっています。原材料はヘーゼルナッツ、ココナツシュガー、カカオパウダー&カカオ豆、ココナツオイル、バニラパウダー(ここまですべてオーガニック)、そしてピンクシーソルト。これがサワード―ブレッドと最高に相性がよかったのでした。
午後、一泊豪華主義に(というわりには入口やスタッフはとてもカジュアルな雰囲気の)Wythe Hotelへ。部屋が空いていたようで、アップグレードしてくれました。感謝!
ここは、初日に書いたアンドリュー・ターロウのホテル。彼のレストランはチップが廃止されて久しいというけれど、ホテルもルームサービスがないことや持ち帰れるアメニティがなく、置いてあるものひとつひとつプライスがついているところなどが無駄がなく、よくもわるくも合理的で若い、新しい感覚。
角部屋の2面がすべて窓、の解放感。眺望するマンハッタンビューは正面にエンパイアステートビル、右にクライスラービル(この2つの造形を愛しています)、MetLifeビル、左に新しいワールドトレードセンター。一旦外出していそいで戻り、とっぷり日が暮れるまで特等席に腰掛けてこの風景に見惚れていました。
辺りは建設ラッシュ。ホテルやビルが雨後の筍のごとく建ち始めていて、この街も景色もそしてこのロフトからの眺めも、ぐんぐん変わっていきそうな勢いです。
外側から見る初めての景色
ブルーベリーパンケーキのブルーベリーはトッピングするか焼きこむか、トーストは白いパンか全粒粉か、目玉焼きの焼き加減はどうするか、いろいろに選べるのがアメリカ的で、なおかつノスタルジックな食堂にて朝ごはん。今どきのローカル&オーガニックなモノではなくてその味も30年くらい前から変わっていない感じ。でも、トータルの雰囲気は嫌いじゃない。
この日はBOCOCAへ。なんとなく賑やかな通りを歩いていると、いい匂いがしてきて、久しぶりに、とてもfascinateingなカフェを発見……と、ここはパン屋さんでありました。
BIEN CUIT。出たばかりのレシピ本が飾られていました。お昼までまだ時間があったので、ひとつだけ何か食べてみることに。
Autumn Plum Danishは4ドル。プラムとレモンバーベナクリーム。7ドルくらいのデニッシュもあった。大きなカンパーニュはホールで10ドル程度。ハード系のパンもデニッシュも、BIEN CUIT(よく焼けた)という店名だけあってよくよく焼き込まれています。パリパリ系ではなくてもっちり系のデニッシュ。
窓際ではチェスに興じる人たち、バゲットサンドくらい大きなクロワッサンサンドを愉しむ人たち。
あとで知ったことには、Bon Appetit誌で5月に、One of the 10 Best Baguettes in Americaを、12月には(これを書いているのは2017.1)Timeout MagazineでBest bakeries in NYCをとった人気店でした。
午後はDUMBOへ。外側からマンハッタンをゆっくり眺めたことがなかったと気がついて、しばらくそこで過ごし、初めての眺めを満喫し、そこで買ったレモネードを飲みながらフェリーでサウスウィリアムズバーグへ。地下鉄ばかりだったので、たまには水上遊覧気分で。
もう一度、過去をたどってみる
旅の途中で、何も予定のない日があると、とても贅沢な感じがするものです。
さて、きょうは何をしよう。
朝と昼はタルティーヌを食べました。
月曜の朝の住宅街。静かなカフェでチョコレートとメープルバターのタルティーヌ。
お昼はマンハッタンに出て、移転したWhitney Museumの上層階のカフェでアボカドのタルティーヌ。世界中からの旅行者たちを眺めながら。ミュージカルより地下鉄やカフェでピープルウォッチングしているほうが、美術館よりウォールアートを眺めているほうが、おもしろいときもある。
その後High Lineを歩いて植物や鳥を眺め、地上に降りてからVillageの界隈へ向かい、Bleecker St.の端から端を納得するまで歩きました。
今回、20年前に行った場所に再訪しよう思って検索した際に、いくつかヒットしたのが閉店した店の情報を発信しているブログ、”Jeremiah's Vanishing New York”のなかの記事で、つまりは店は既に存在していなかったのでした。にもかかわらず、たとえばおばあさんのやっているキルト屋さんとか、かわいい猫のいるアンティークショップとか、20年も経てば当然、その人も店もいなくて当然とも思えるのに、確かめたくて歩いて歩いて歩いてみたのです。企業を退職した後、アメリカの手工芸品を扱う店を短期間、開いていたことがありました。その頃の幻の残像みたいなものが見えないかなと思ったけれど、見えなかった。きれいさっぱり。自分の情熱が足りなかったのかもしれないし、単にそのときあったものたちが、消えてしまっただけかもしれない。町はFOR RENTとFOR LEASEの張り紙だらけ、に思えた。
でも、小さな本屋さんがあって、ちょっと救われました。
以下はFacebookから。
地価の激しい値上がりでFOR RENTの空き店舗が目立つマンハッタンでは、きっと個人店の本屋さんも、この20年でたくさん廃業しているのだと思うけれども、それでもまだ小さな本屋さんが残っていてほっとした。地下鉄のなかでも、ぶあついハードカバーの本を読みふけっている人が目につく。みんな読書家だ。地下鉄ブックレビューというインスタグラム(地下鉄で出会った読書人を本と一緒にUPし続けている)をわたしもフォローしていて、おもしろいのでいつか東京の地下鉄でやってみたいと思っているのだが、実際のところ東京ではスマホをいじっている人ばかりでハードカバーの本を読んでいる人なんて皆無に等しい。NYの地下鉄はあまり電波が入らないせいか、スマホをいじっているひとはほとんどいない。
本屋さんに入るたび、"Goodbye for Now"の原書を探してもらった。ネットでは探し物は必ず見つかるし早く入手するにはベストな手段だと思うけれど、急がないものは日本でも本屋さんで買う。本屋さんに消えてほしくないと思っているから。
残っているものがよくて新しいものがよくないというわけではなくて、新しく知った素敵なお店もたくさんありました。
たとえばVan Leewen artisan ice cream。自然派のアイスクリーム店。
ハニーカム、紅茶、ヴィーガンチョコレート(乳製品を使っていない)などが、とても気に入りました。お店によって(店員によって)盛り方が違うのが、らしいというか、おかしい。アイスクリームが好き過ぎる様子の女性が時間をかけてたっぷり盛ってくれた店では、その笑顔に癒されました。好き、って大事。
夜はDBGB Kitchen&Barでシグニチャーバーガーを。再びBouludのお店で丁寧に作られたアメリカ料理。この日は一日、東京と大差のないカフェの食べ物で過ごし、食に冒険を求めなかった。
DBGB(Daniel Boulud Good Burgar)は昔、CBGBというクラブのあった場所。30年くらい前は、行ってはいけないエリアに入っていた気がします。
下記もFacebookから。
SUBWAY。30年くらい前は(と書きながら自分で自分の年に驚くのだけれども)行ってはいけない危険なところというのがあって、地図にくっきり境界線など引いていたものだったし、地下鉄にはずいぶん緊張して乗っていたものだった。それが最近はどこの駅にも柔軟剤の匂いみたいなのが漂っているし、なんとなく明るくてきれいなのだった。列車の恐ろしいほどの轟音はそのままだった。そしてやっぱり、構内ではものすごくレベルの高い歌やトランペットやヴァイオリンを楽しめた。トークンはかなり前からメトロカードに変わっていた。タッチではなくてスライドで、通すのがゆっくりすぎるとごついバーに阻まれて通れず、電光表示でもっと早くスライドせよと表示された。早すぎてもいけなかった。スイカはピーだけどメトロカードはピーーーと間延びした音が響くのだった。それからそれから、駅名のモザイクは全部の駅、撮りたいほどすきだった。
今回もマップが切れるほどいろいろな路線に乗った。
ほんとうに、行きたいと思いながら20年、ようやく訪れた、好きだった場所。出会う人もモノも変化していて、なにより自分も変化している、と感じた旅でした。で、もう一度行きたいか、と聞かれたらやっぱり行きたい、と思うのです。
Blue Hillへ
先日、Dan Barber(ダン・バーバー)の話をFacebookに書いたこともきっかけとなって、Megumiさん、Yoichiroさん一家とアップステートにあるダン・バーバーの農場、Blue Hillに行くという夢のようなことが実現しました。
少し前に、「おいしい」の叡智 ~食のプロフェッショナル3名によるトークセッション(楠本修二郎さん、山田チカラさん、小山伸二さん)なるギャザリングに参加して、そこでDan Barberのことを知りました。私自身、料理人やパン職人にインタビューさせていただく際に、おおげさでなく地球の平和について話題になることが多くなってきているのを体感していたし、この食べものはどうやってつくられたのか、それは何故かと考えることはいつもの取材の核にあるのです。そして誰でも「おいしい」にまつわる消費に、社会に、自分の一票を投じたり、投じなかったりできるのだから、もっといろいろ知っておかなくてはね、というようなことを思っていた。そんな時に拝聴したDan Barberのスピーチには感動がありました。
とても面白いです。「驚くべきフォアグラ物語」(日本語字幕あり)
その彼が経営するBlue Hillという農場はブルックリンから車で40分くらいのところにあります。子供と一緒に湧水を汲んで飲んだり、羊や牛や七面鳥など、動物たちを眺めたりしながら歩く、その全方位に高層ビルが一つも見えない。休日に訪れるのにとてもいい癒しの場なのだとMegumiさんに教えてもらって、ニューヨークの広さをあらためて思いました。どんなに歩いても疲れないし、空気も食べものも、なんでもおいしくて、本当に幸せな場所でした。Dan Barberには会えなかったけれど、ご縁とは不思議なものです。
午後はブルックリンに戻って、ウィリアムズバーグの古着屋さん巡り。私はなにも買わなかったけれども、服も家具も古いものを使いまわしてモノとしての寿命を長くするのって、悪くないと思います。家の前に「ご自由にお持ちください」と書いて置いてある椅子や箪笥や棚にもよく出合います。合理的です。この青い棚を眺めていたら、家からおばさんが出てきてニッコリ笑って「これもどうぞ」とヤンキースのキャップを置いていきました。
夜、再びMegumiさんたちと合流してBushwickの倉庫のようなピザ屋さん、大人気のRoberta'sへ。ストリートパフォーマーもたくさんいて、躍動するヒップな町、という印象。熱気に満ちたお祭り騒ぎの夜。長い日曜日でした。
Local,Organic,Craft and Comfort
週末はFORT GREENEのグリーンマーケットへ。ドッグランで朝晩、犬たちが幸せそうに走り回っている公園です。ここも近郊農家の野菜や果物、パンや乳製品のつくり手たちのお店で賑わいます。NYのリンゴはマッキントッシュ、フジ、ハニークリスプなど、何種類もあって、小さくて味が濃くておいしい。リンゴやヨーグルトなどを買いました。
その後、家主さんおすすめの、地元の人で賑わうカウンターだけの小さなコーヒーショップ、Bitter Sweetへ。オリジナルのベイクもののほか、DoughのドーナツやBalthazarのパンなど、少量ずつセレクトされたものがショウケースにあります。店の前は犬たちを含めた井戸端会議の場で、いろいろな種類の犬たちが素晴らしく利口でかわいい。どの犬も買い主がコーヒーを買うのを大人しくステイして待っているのです。
そこのコーヒーとスコーンを手に、歩いて数分のもうひとつのフリーマーケットへ。以前は週末というとAntiquing(骨董商巡り)していたものですが、今回はそんなに積極的にならなかったのはなぜか。物欲が減ったのかも?
そこにもブルックリンで有名なドーナツ屋さん、Doughが屋台を出していて、レモンポピーシードをひとつ、買いました。グリーンマーケットから始まって、移動ブフェのような朝食。こういうのも旅先ならではです。
ドーナツは大きいけれどふわふわで、甘さは控えめ。レモンの酸味も効いています。その日の分だけ仕込み、職人がひとつひとつ手作りするのだそうです。
ハンバーガーもドーナツもコーヒーも(その後、ピッツァやアイスクリームやパイにも出合うのですが)アメリカ人が子供の頃からおもに大量生産のファストフードとして慣れ親しんだ食べ物が最近、オーガニックや地元の厳選素材を用いた、職人の手によるクラフトフードとして新たに注目を浴びてブレイクする、という流れがあるようです。
新しいものではなくて懐かしい、親しみ深いあの食べ物が、添加物が多用される前、すなわち半世紀~1世紀前のレシピで手間をかけてつくられて、目の前に登場するのです。これがおいしくないわけがない。ただの懐古趣味ではないのですね。
午後はPAUL AUSTER(ポール・オースター)の住む、パークスロープを散歩。『THE BROOKLYN FOLLIIES(ブルックリン・フォリーズ)』は大好きな一冊です。(本を読む人にはおすすめです)。
賑わっているカフェに並んでレンズ豆のスープをテイクアウトして店の前のベンチで食べました。NYの豆のスープが好きです。こういうときにも便利だし、これからの寒い季節には、ひとり旅でもお金があまりなくても、たっぷりの豆のスープが心も体も温めて助けてくれます。こういうのは真似をして家でもよくつくります。
夕方はNY在住のMegumiさん一家とGowanusのpie bakery、Four&Twenty Blackbirdsで待ち合わせ。行列ができているのになんとなく流れてみんな自然に座れる、セルフサービスの素敵なカフェです。やはりここにも大きなテーブルがあって、ゆったりと新聞を読む人の姿も。Salted Caramel Apple はざっくりとして家庭的な味がほんとうにおいしくて、温かい気持ちになり、スイスイと食べてしまいました。
それもそのはず、ここのパイは姉妹がおばあちゃんのレシピで焼いていて、その素材はできるだけ地元のオーガニックのもの、季節のものにこだわって、精製され過ぎない、蜂蜜などナチュラルな甘味が使われているのです。姉妹はなんとSouth Dakota出身とか。わたしがアメリカで初めて訪れ、ひと夏を過ごした場所です。その時に、手作りのおいしいパイをご馳走になったことを思い出しました。
さて。Four&Twenty Blackbirdsのあとは、再び、アンドリュー・ターロウ系列のお店、Marlow&Sonsで夕食を。となりは食材店のMarlow&Daughters(肉売り場が圧巻)、その並びのビーガンチョコレートやアイスクリームなどの小さなお店、Doctor.cowにも行きました。どのお店も気取りがなくカジュアル、そして本質的にすごくいいものを揃えていて、価格的にはデフレの日本から行くと、ちょっと高価に感じます。しかし、味に間違いはありません。
いわしのフリットに水牛のチーズ、ローストチキンにトウモロコシやいろいろな野菜のグリル、オイスター、そして初日にも食べたSHE WOLF BAKERYのパンにたっぷりのバターと岩塩。やはりパンに力がある。料理は素材を活かすシンプルな味付けで、とても気に入りました。アンドリュー・ターロウの店はここもガヤガヤと大賑わい。おいしいもの尽くしの夜になりました。
Friend of a Farmer
昨日の午後はダウンタウンをArcade Bakeryまで歩いて(美術館に続きJust closed。そんな日だったのかも)からブルックリンのアパートメントに戻り、地下のランドリールームへ。
そこはまさにアメリカの普通の家らしさがあって、奥の薄暗がりになにがあるかわからないところがちょっと怖く、Wordsworthの古い詩集がぽん、と置かれているのを洗濯の合間に眺めたり……というようなことが私にとってはすこぶる楽しく、ひとりで地下室で洗濯をするくらいで勇敢な気持ちになっている自分も結構おかしく。
夕食は近所のフランス系の人がやっている謎めいたカフェで、時差ぼけの目をこすりながら。頼んだメニューが、シイタケマッシュルームのラザニアやロメインハートのサラダ、そして(今でも夢かもしれないと思う)2.5センチ角のフレンチフライのついたビスケット生地のバーガー。NYのフランス人がつくるハンバーガーのバリエーションのひとつでしょうか。シュールで、眠すぎて、写真はナシです。
そして翌朝。
朝一番に、パンケーキが食べたいと夫が言うので、地下鉄を乗り継いで、再びマンハッタンはIrving PlaceのFriend of a Farmerへ。いまはすっかり高級ホテルに様変わりしてしまったGramacy Park Hotelが古いホテルだった頃、滞在した時に見つけたお店でした。地価高騰するマンハッタンで店が消えていくなか、変わらずに残っていることはすごいことです。変わらずにというのも大切なポイントで、店はあっても中身がすっかり変わっていることもあるのです。
Farm to Tableという言葉がトレンドとなって久しいですが、Friend of a Farmerはもう30年もそんなことをやっている、草分け的なお店のひとつ。サービスの女性に20年前にもその前にも来たと言ったら驚いて(そうでしょう。彼女は赤ちゃんだったかも。すごく昔のように思えるはず)よろこんでくれました。
自家製のアップルバター付きの、Apple buttermilk pacakes。この味だった。こういう、ふわふわし過ぎないパンケーキが好みなのです。
食後は横なぐりの雨の中、Union sq.のGreen Marketへ。パン屋さんや焼き菓子屋さんも出店していて、グルテンフリーの食べ物はここでもあちこちにありました。近郊農家の、色とりどりの野菜たちが楽しくて飽きず、雨にも関わらず端から端まで見て歩きました。
いつもどこかで特別なイベントとしてではなく、あたりまえに市場が開かれていて、農家の人やパン屋さんやチーズ屋さんが決まった場所へ売りに来る、地域の人にとって、なくてはならない場所となっている感じがほんとうに素敵でうらやましく思いました。
それからStrand書店やChinatownの店など毎回行く、何十年もそこにあり続ける店を確認しに行く一方、テーマやコンセプトでまとめられたフードコート、商業施設にも行ってみました。そうした場所はガイドブックでは行くべき場所のように書かれており、それなりに賑わっているのだけれど、個人的にはほとんど興味がそそられなかった。お店はそのお店独自の匂いと佇まいで、かつてそうであったようにひとつひとつ光りながら存在しているほうがそそられるのです。あと10年、20年したらここはどんなふうに変わっているだろう。
夜はロブションNYの山口さんと、Greenwich VillageのBlenheimへ。自家農園直送の野菜のおいしいレストランです。ケールを焼いたり、芽キャベツを素揚げしたりするのが新鮮。ボディのしっかりした野菜は、そうした調理法に馴染むのですね。時差ぼけピークでしたが、お元気そうな山口さんにお会いできてよかった。来年は新しいブーランジュリーもいよいよ動き出しそうです。
Bakeriから始まった長い一日。
朝、Greenpointのベーカリーカフェ、Bakeriへ。Bakeriの読み方は、「バケリ」というそうです。大きなテーブルに夫とのんびりと腰掛けてコーヒーを飲み、マフィンなど食べながら友を待ち、朝の店の雰囲気を楽しみました。
古風な木造のレジスターの台の上に、タブレットを設置しているのが今風です。
奥はオープンキッチンで、カウンター席からパンをつくるところが正面に見えるのが楽しい。大型のパンは朝のうちに焼き上がっています。
色とりどりの花や果実が描かれた壁紙にシャンデリアという、女の子の部屋のようなスイートな雰囲気のなかに、建設現場の作業員風な男性のお客さんの姿もあって、そういえば、ブルックリンではコンビニをほとんど見かけないなぁとあらためて思ったのでした。個人店に活気があり、個人店主とのつながりを大事にし、応援する人が多く住む界隈……だとしたら、素敵だ。
これもまた可愛い、バラのかたちのマフィンは、レモンポピーシードとピーチ。
レモンとポピーシードの組み合わせの焼き菓子が好きで、見つけると素通りできません。
朝食後はプラスキー橋を歩いて渡って、地下鉄でマンハッタンの66th stを目指します。
私がNYに行かない間に、ミッドタウンの新しい建物に引っ越して、そして再び古巣に戻ってきていたAmerican Folk Art Museumに行くために。Henry DargerのCollectionも観たかったし。ところがClosed。帰国まで展示入れ替えのために休館という憂き目に。がっくり肩を落とし、案内の人にも慰められたのでしたが、残念過ぎました。でもいつか再訪する理由が、これでひとつできました。See you someday......
お昼は気を取り直して、リンカーンセンター近くのÉpicerie Bouludのカフェへ。観劇や買いもの前後にちょっと寄るのにいい場所。
フレンチのシェフ、Daniel Bouludさんはいくつものレストランやカフェやバーを展開しています。新進気鋭のシェフ・ブーランジェ、François Brunetさんが以前、Bread Journalにメッセージを寄せてくださっていたことも良いきっかけとなって、訪れてみたのです。
ここは食料品店内のセルフサービスのカフェ。とはいえ、カウンターテーブルの目の前に新鮮なオイスターが何種類も並んでいたりなどもします。
ジャンボンフロマージュと熱々のカリフラワーのポタージュは、まさにこのお昼に食べたかった味でした。夫が選んだDBGBドッグ(ブリオッシュ生地)もまた、量も質もテイストもまるで東京で食べているような気持ちに。パリでもNYでもなくトーキョー。こういう食事の差異は縮まっているのかもしれません。