第11回メープルスイーツコンテスト・グランプリはパン部門から
11月9日に開催されたクインビーガーデン「第11回メープルスイーツコンテスト」は応募総数123品より、総合グランプリはパン部門、サンジェルマンの野村聡さんが選ばれました。作品名はPatate douce d'érable。塩バターパンの発想からメープルバターを巻き込んだ、サツマイモ入りハースブレッドです。
メープルとサツマイモの相性、人柄が感じられる優しい味、もう一度食べたいと思わせる、など、その理由を審査員の柳正司シェフが挙げられていました。
このパン、Patate douce d'érableは「プルミエ サンジェルマン」中野店で2月より販売が予定されています。
パン部門の優勝はエコール辻 東京の平良透さんでした。おめでとうございます。
最近の記事はこちら
旅の効能
旅の効能は、終えたときに違う世界に戻ってくることだ。
場所を変えた日常、のような旅から戻ってこの半月で、お能(国立能楽堂)、帯の作家さんの展示会(三渓園)、KIITSU(鈴木其一)展(サントリー美術館)、杉本博司『ロスト・ヒューマン』(東京写真美術館)など、逆にこちらが旅のなのではと思うような日々でした。茶道の稽古や資格者講習会もあったので、既に6日もきもので過ごすなど、日本で好きなものやことにどっぷりとひたりました。
昔の旅と違うのは、すぐに「あっちに戻りたい」とならないこと。
自分がすきなものは、どこにいても愛せるし、日本にもいいものがたくさんあると思えるようになったこと。自分の暮らしかたを確立しつつあるのかもしれない。
東京写真美術館にはメゾン・イチのカフェができていました。
Bread,Coffee and Something Good in NY
何しにNYへ?と聞かれて、今さら都市を擬人化して大好きなひとに20年ぶりに会いに行く感じ、を伝えても伝わらないかもしれないのでとりあえず「週末の生活をそのまま東に6,700マイルほど移動させただけ」と格好つけておきましょう。
そんな旅も終わりに近づいてきました。
最後の夕食はWytheホテルのダイニング、Reynaldにて簡単に。料理人のつくるハンバーガーをオニオンもチーズもナシにしてもらい、シンプルに味わう。ブリオッシュでない普通のバンズで。これもまたおいしかった。She Wolf Bakeryかな。
夫が注文したフライドチキンのサンドにはcilantroが。パクチーとかコリアンダーと言わないで、スペイン語のシラントローで市民権を得ていました。
翌朝、パノラミックな部屋で朝日を拝んでから、Bakeriの本店へ。
Bakeriで始まりBakeriで終わる朝食なのでした。ここではマフィンやタルトばかり食べていたと気づき、お土産にサワードーブレッドをひとつ購入。
それからToby's Estate Coffeeへ。
大きな焙煎機の横にLaptop Freeのテーブルがあったので、届いたばかりの急ぎの仕事を少し。C誌編集部が選んでくれたいくつかの素敵なカンパーニュについて書く仕事でした。旅の時間に日本時間を持ち込んでしまったけれども、思い出して書きながら、この20年で日本のパンは本当においしくなったなぁとしみじみ。
久しぶりにたべたNYのパンはというと、しっとりもっちり優勢な東京のパンと比べて軽く、ワイルドで、でもやっぱりそれはそれでおいしかった。Upstateの小麦粉を使っているというのがよかったし、この旅のあいだ、Local,Organic,Craft and Comfortということがドキドキするほど伝わってきて、講演用の原稿が書けてしまったくらいだった。
そして私は、日常の延長のように今ここにこうして居られることに感謝していました。
夫の会社を一からつくっていくこと、執筆の仕事をコツコツと続けていくこと、私たちを応援してくれていた三人と一頭の家族それぞれの生老病死。さまざまな理由で日本を離れなかった20年間の後で。よく歩き、時々過去の幼い幻と向き合い、頭の中にあった古い地図をきれいに上書きする旅となりました。
さて。
Last minutes shoppingの後、Whole Foods(よく足を運んだスーパーマーケット)を見納め、Van Leewen artisan ice creamに行き、再びToby'sでコーヒーを買う。コーヒーショップの前にはいつも、お行儀のいい犬たち……そうそう。犬たちを留守番させなければならなかったことだけ、心残りでした。
再びUberを呼んでJFKへ。東京へ。
これで今回のNYの旅のお話は終わりです。
また行きたいか、と聞かれたら行きたい、と答えます。
あの街で力一杯生きる素敵な友達と、お会いできたすべてのひとに感謝しています。
Thank you!
職人のPIZZAとチョコ,眺めのよいLOFT
ドーはドーナツのドー
ほかにも良いドーナツ屋さんはあるに違いないが、Dooughのドーナツはおいしかった。アパートメントを去る朝の食事は部屋でBitter SweetのコクのあるコーヒーとDoughのドーナツと大きなパン・オ・ショコラ(Balthazarかハウスメイドか不明)、リンゴはFujiとHoney Crisp、そしてギリシャヨーグルト、ジュース。
ヨーグルトやジュースを買うグロサリーストアは個人経営で、意識の高低が商品に表れている。店の人が楽しそうにしている店はいつもいい感じの空気が流れていて、買いものもリラックスできて楽しかった。コンビニができる前は私たちの街にも、こんなお店があったよな、と思う。
滞在していたタウンハウスの部屋はよかった。撮影不可の決まりで載せられないが、アメリカンフォークアートの絵画や調度品、家主さんのホスピタリティ、かけがえのない体験だった。
Uber(ウーバー)を呼んで最終宿泊地へ。Uberは今回の旅で感動の便利さだった。
Uberとはイエローキャブが走っていないブルックリンなどで、タクシー代わりになる配車サービス。
簡単に説明すると、まずスマホにアプリhttps://www.uber.com/ja-JP/ride/を入れてアカウント登録する。次に、希望の車種を選んで目的地を入れると見積金額が表示されるので、確認してクリックすると自分がいる場所に車が来てくれる。「あと何分で到着します」などのお知らせと共に運転手の名前や顔写真がリアルタイムで届くのです。タクシーと違っていつもきれいな車で。目的地に着いたら支払いはカード引き落としのキャッシュレス。チップ不要。メールで領収書が届く。チップはなくとも降りてから運転手を評価することができるためか、サービスもかなり快適です。ルートがすべて記録されているのも安心で、価格は普通車UberXの場合、NYではタクシーと同じか少し安いかもと感じました。初回無料乗車(上限額は都市によって異なる)できる私からの招待コードは「y9q9v3a2ue」です。登録のときに入力すればよいそう(そうすると私にも特典があるそうな!)です。
前回はインターネットはもちろんスマホもない時代だったから(なんて昔なんでしょう)、さほど不便に思わなかったけれども、今こうして宿泊やレストランの予約や配車や撮影、そして「ここどこ?」までもスマホを頼りにできることを考えると、すごい時代になったものだと思います。
ホテルに荷物を預けてから地下鉄に乗って、Bushwickにある倉庫のようなピザ屋さん、Roberta'sを再訪。入り口がわかりにくく秘密基地のようです(下記参照)。こんどは待たずに入れました。アマトリチャーナ、ロメインレタスのサラダ、もちろんピザも、何を食べてもおいしいお店。
それから近くの、Fine&Rawのチョコレート工場併設のショップへ。ここも倉庫で質実剛健、カジュアルながら高級。ほとんど買いものをしなかったこの旅で、洒落たデザインの板チョコはよいお土産となりました。
Fine&Rawのチョコレートヘーゼルナッツバターは乳製品ではなくナッツの油脂でスプレッドになっています。原材料はヘーゼルナッツ、ココナツシュガー、カカオパウダー&カカオ豆、ココナツオイル、バニラパウダー(ここまですべてオーガニック)、そしてピンクシーソルト。これがサワード―ブレッドと最高に相性がよかったのでした。
午後、一泊豪華主義に(というわりには入口やスタッフはとてもカジュアルな雰囲気の)Wythe Hotelへ。部屋が空いていたようで、アップグレードしてくれました。感謝!
ここは、初日に書いたアンドリュー・ターロウのホテル。彼のレストランはチップが廃止されて久しいというけれど、ホテルもルームサービスがないことや持ち帰れるアメニティがなく、置いてあるものひとつひとつプライスがついているところなどが無駄がなく、よくもわるくも合理的で若い、新しい感覚。
角部屋の2面がすべて窓、の解放感。眺望するマンハッタンビューは正面にエンパイアステートビル、右にクライスラービル(この2つの造形を愛しています)、MetLifeビル、左に新しいワールドトレードセンター。一旦外出していそいで戻り、とっぷり日が暮れるまで特等席に腰掛けてこの風景に見惚れていました。
辺りは建設ラッシュ。ホテルやビルが雨後の筍のごとく建ち始めていて、この街も景色もそしてこのロフトからの眺めも、ぐんぐん変わっていきそうな勢いです。
外側から見る初めての景色
ブルーベリーパンケーキのブルーベリーはトッピングするか焼きこむか、トーストは白いパンか全粒粉か、目玉焼きの焼き加減はどうするか、いろいろに選べるのがアメリカ的で、なおかつノスタルジックな食堂にて朝ごはん。今どきのローカル&オーガニックなモノではなくてその味も30年くらい前から変わっていない感じ。でも、トータルの雰囲気は嫌いじゃない。
この日はBOCOCAへ。なんとなく賑やかな通りを歩いていると、いい匂いがしてきて、久しぶりに、とてもfascinateingなカフェを発見……と、ここはパン屋さんでありました。
BIEN CUIT。出たばかりのレシピ本が飾られていました。お昼までまだ時間があったので、ひとつだけ何か食べてみることに。
Autumn Plum Danishは4ドル。プラムとレモンバーベナクリーム。7ドルくらいのデニッシュもあった。大きなカンパーニュはホールで10ドル程度。ハード系のパンもデニッシュも、BIEN CUIT(よく焼けた)という店名だけあってよくよく焼き込まれています。パリパリ系ではなくてもっちり系のデニッシュ。
窓際ではチェスに興じる人たち、バゲットサンドくらい大きなクロワッサンサンドを愉しむ人たち。
あとで知ったことには、Bon Appetit誌で5月に、One of the 10 Best Baguettes in Americaを、12月には(これを書いているのは2017.1)Timeout MagazineでBest bakeries in NYCをとった人気店でした。
午後はDUMBOへ。外側からマンハッタンをゆっくり眺めたことがなかったと気がついて、しばらくそこで過ごし、初めての眺めを満喫し、そこで買ったレモネードを飲みながらフェリーでサウスウィリアムズバーグへ。地下鉄ばかりだったので、たまには水上遊覧気分で。
もう一度、過去をたどってみる
旅の途中で、何も予定のない日があると、とても贅沢な感じがするものです。
さて、きょうは何をしよう。
朝と昼はタルティーヌを食べました。
月曜の朝の住宅街。静かなカフェでチョコレートとメープルバターのタルティーヌ。
お昼はマンハッタンに出て、移転したWhitney Museumの上層階のカフェでアボカドのタルティーヌ。世界中からの旅行者たちを眺めながら。ミュージカルより地下鉄やカフェでピープルウォッチングしているほうが、美術館よりウォールアートを眺めているほうが、おもしろいときもある。
その後High Lineを歩いて植物や鳥を眺め、地上に降りてからVillageの界隈へ向かい、Bleecker St.の端から端を納得するまで歩きました。
今回、20年前に行った場所に再訪しよう思って検索した際に、いくつかヒットしたのが閉店した店の情報を発信しているブログ、”Jeremiah's Vanishing New York”のなかの記事で、つまりは店は既に存在していなかったのでした。にもかかわらず、たとえばおばあさんのやっているキルト屋さんとか、かわいい猫のいるアンティークショップとか、20年も経てば当然、その人も店もいなくて当然とも思えるのに、確かめたくて歩いて歩いて歩いてみたのです。企業を退職した後、アメリカの手工芸品を扱う店を短期間、開いていたことがありました。その頃の幻の残像みたいなものが見えないかなと思ったけれど、見えなかった。きれいさっぱり。自分の情熱が足りなかったのかもしれないし、単にそのときあったものたちが、消えてしまっただけかもしれない。町はFOR RENTとFOR LEASEの張り紙だらけ、に思えた。
でも、小さな本屋さんがあって、ちょっと救われました。
以下はFacebookから。
地価の激しい値上がりでFOR RENTの空き店舗が目立つマンハッタンでは、きっと個人店の本屋さんも、この20年でたくさん廃業しているのだと思うけれども、それでもまだ小さな本屋さんが残っていてほっとした。地下鉄のなかでも、ぶあついハードカバーの本を読みふけっている人が目につく。みんな読書家だ。地下鉄ブックレビューというインスタグラム(地下鉄で出会った読書人を本と一緒にUPし続けている)をわたしもフォローしていて、おもしろいのでいつか東京の地下鉄でやってみたいと思っているのだが、実際のところ東京ではスマホをいじっている人ばかりでハードカバーの本を読んでいる人なんて皆無に等しい。NYの地下鉄はあまり電波が入らないせいか、スマホをいじっているひとはほとんどいない。
本屋さんに入るたび、"Goodbye for Now"の原書を探してもらった。ネットでは探し物は必ず見つかるし早く入手するにはベストな手段だと思うけれど、急がないものは日本でも本屋さんで買う。本屋さんに消えてほしくないと思っているから。
残っているものがよくて新しいものがよくないというわけではなくて、新しく知った素敵なお店もたくさんありました。
たとえばVan Leewen artisan ice cream。自然派のアイスクリーム店。
ハニーカム、紅茶、ヴィーガンチョコレート(乳製品を使っていない)などが、とても気に入りました。お店によって(店員によって)盛り方が違うのが、らしいというか、おかしい。アイスクリームが好き過ぎる様子の女性が時間をかけてたっぷり盛ってくれた店では、その笑顔に癒されました。好き、って大事。
夜はDBGB Kitchen&Barでシグニチャーバーガーを。再びBouludのお店で丁寧に作られたアメリカ料理。この日は一日、東京と大差のないカフェの食べ物で過ごし、食に冒険を求めなかった。
DBGB(Daniel Boulud Good Burgar)は昔、CBGBというクラブのあった場所。30年くらい前は、行ってはいけないエリアに入っていた気がします。
下記もFacebookから。
SUBWAY。30年くらい前は(と書きながら自分で自分の年に驚くのだけれども)行ってはいけない危険なところというのがあって、地図にくっきり境界線など引いていたものだったし、地下鉄にはずいぶん緊張して乗っていたものだった。それが最近はどこの駅にも柔軟剤の匂いみたいなのが漂っているし、なんとなく明るくてきれいなのだった。列車の恐ろしいほどの轟音はそのままだった。そしてやっぱり、構内ではものすごくレベルの高い歌やトランペットやヴァイオリンを楽しめた。トークンはかなり前からメトロカードに変わっていた。タッチではなくてスライドで、通すのがゆっくりすぎるとごついバーに阻まれて通れず、電光表示でもっと早くスライドせよと表示された。早すぎてもいけなかった。スイカはピーだけどメトロカードはピーーーと間延びした音が響くのだった。それからそれから、駅名のモザイクは全部の駅、撮りたいほどすきだった。
今回もマップが切れるほどいろいろな路線に乗った。
ほんとうに、行きたいと思いながら20年、ようやく訪れた、好きだった場所。出会う人もモノも変化していて、なにより自分も変化している、と感じた旅でした。で、もう一度行きたいか、と聞かれたらやっぱり行きたい、と思うのです。
Blue Hillへ
先日、Dan Barber(ダン・バーバー)の話をFacebookに書いたこともきっかけとなって、Megumiさん、Yoichiroさん一家とアップステートにあるダン・バーバーの農場、Blue Hillに行くという夢のようなことが実現しました。
少し前に、「おいしい」の叡智 ~食のプロフェッショナル3名によるトークセッション(楠本修二郎さん、山田チカラさん、小山伸二さん)なるギャザリングに参加して、そこでDan Barberのことを知りました。私自身、料理人やパン職人にインタビューさせていただく際に、おおげさでなく地球の平和について話題になることが多くなってきているのを体感していたし、この食べものはどうやってつくられたのか、それは何故かと考えることはいつもの取材の核にあるのです。そして誰でも「おいしい」にまつわる消費に、社会に、自分の一票を投じたり、投じなかったりできるのだから、もっといろいろ知っておかなくてはね、というようなことを思っていた。そんな時に拝聴したDan Barberのスピーチには感動がありました。
とても面白いです。「驚くべきフォアグラ物語」(日本語字幕あり)
その彼が経営するBlue Hillという農場はブルックリンから車で40分くらいのところにあります。子供と一緒に湧水を汲んで飲んだり、羊や牛や七面鳥など、動物たちを眺めたりしながら歩く、その全方位に高層ビルが一つも見えない。休日に訪れるのにとてもいい癒しの場なのだとMegumiさんに教えてもらって、ニューヨークの広さをあらためて思いました。どんなに歩いても疲れないし、空気も食べものも、なんでもおいしくて、本当に幸せな場所でした。Dan Barberには会えなかったけれど、ご縁とは不思議なものです。
午後はブルックリンに戻って、ウィリアムズバーグの古着屋さん巡り。私はなにも買わなかったけれども、服も家具も古いものを使いまわしてモノとしての寿命を長くするのって、悪くないと思います。家の前に「ご自由にお持ちください」と書いて置いてある椅子や箪笥や棚にもよく出合います。合理的です。この青い棚を眺めていたら、家からおばさんが出てきてニッコリ笑って「これもどうぞ」とヤンキースのキャップを置いていきました。
夜、再びMegumiさんたちと合流してBushwickの倉庫のようなピザ屋さん、大人気のRoberta'sへ。ストリートパフォーマーもたくさんいて、躍動するヒップな町、という印象。熱気に満ちたお祭り騒ぎの夜。長い日曜日でした。