「千年の一滴 だし しょうゆ」と「すごい!日本の食の底力」
明治記念館で開催された第6回辻静雄食文化賞の贈賞式に出席しました。
辻静雄食文化賞とは、辻調グループ校の創設者、辻静雄さん(1933~1993)の志を受け継ぎ、食文化の発展に貢献した人の活動や作品に贈られる賞です。
今年の受賞は国際共同制作ドキュメンタリー映画「千年の一滴 だし しょうゆ」(柴田昌平監督)でした。
日本の味を支える食材をつくる自然と人々と、それらのいいところを引き出した、それこそ「だし」のような映画なのだそう。
鹿児島の鰹節生産者や寺田本家の杜氏、京都の種麹屋さんのご主人や醤油屋さん、祇園川上のご主人や京大で栄養化学研究をされている先生、東大で麹菌を研究されている先生ら、出演者の方々も出席されており、映画をまだ観ていないというのに、会場に漂う情熱あるいは「気」のようなものに包まれてドキドキしてしまうという……。
これは観たい映画です。予告編がネットで見られます。
そして、もうひとつの賞、専門技術者賞は日本料理「龍吟」の山本征治さんが受賞されました。
「日本料理をやっていると、この国の宝物が使えるんだ、と思う」。
山本さんは言います。これが日本の宝物ですよ、と世に伝えていかなければならない。それを伝えるかたちが、日本料理なのだと。
「日本料理って何?」とたくさんの人から聞かれてきた、山本さんが出した答えでした。
お店にはまだ伺ったことはありませんが、山本さんのことは『すごい!日本の食の底力』(光文社新書)で拝読していました。
この本にも、今日の会場で感じたのと同じ種類の気が流れていました。
代々木八幡の「365日」の杉窪章匡さんもこの本で取材を受けられています。
最後に書かれてあったことが印象的でした。
「現在の食の世界の主人公たちは、ネットワークを駆使したコミュニケーション力に長けている。かつてのようにピラミッド型の組織をつくって、ヒエラルキーを決めながら上意下達の情報伝達をするのではなく、フラットなコミュニティをつくって、縦横無尽に情報をやりとりする。従来の組織は技術の研鑽と共有が主目的だったが、現在のコミュニティはお互いの価値観の多様性を認め合い、それを共に高めていこうとする意識に溢れている。そこには専門とする料理ジャンルの棲み分け等なく、生産者や流通業者、加工業者、そして消費者も入って互いの情報を伝え合う」『すごい!日本の食の底力』(光文社新書)あとがきより抜粋
新しい時代の食の職人たちに、興味が尽きません。