バブカとは何か?Babkaが流行の兆しです。

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http://www.enjoytokyo.jp/style/103775/

2015年にLet's Enjoy Tokyo『お江戸日本橋パン的愉悦』で
マンダリンオリエンタルホテルのバブカのことを書いた。

ホテルへは、非日常のパンを買いに行く。
非日常だから、旅をしているような気分になるパンがいい。
たとえば、「バブカ」(280円)。

東ヨーロッパ発祥の、祝日に食べるパンだったのがアメリカ東海岸ニューヨークへ渡り、それからさらに東の東京、日本橋に着地したという、ロマンを感じさせるパンだ。

しっとりとしたブリオッシュ生地にビタースイートなチョコレートがふんだんに巻き込まれ、トッピングのシュトロイゼル(カリカリのそぼろ)がアクセントになっている。
小さいけれど贅沢なところが、大人っぽい菓子パンだ。これは週末の朝にゆっくり楽しみたい。

 お江戸日本橋パン的愉悦


「グルメショップ by マンダリンオリエンタル東京」は2014年3月のリニューアル後からバブカを販売していて、記事を書いた当時、私はここでしかそれを見たことがなかったけれども、NYではすでにブレイクしていた。

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バブカとは何か。

 

スイーツ愛好家のNiko Triantafillouさんが2015年、いくつかのバブカについて書いている。アレンジを施しながら進化させてしまうのは日本の職人さんの特権かと思っていたらNYも自由だった。バブカのクロワッサンにバブカのドーナツだなんて。

一般的なバブカは、濃厚なパネトーネのような生地にチョコレートやシナモンを巻き込んでいてトッピングにはカリカリのクランブル。

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マンダリンのはそれに沿いながら極めて丁寧に上質に、小さく仕上げている。
バブカはポーランドウクライナのほうの言葉で「小さなおばあさん」という意味だ。

 

もとはパネトーネのように大きく高さもあって、そのかたちが、おばあさんのプリーツスカートのようだから「おばあさん」を意味する「ババ」と呼ばれていたという。
とするなら、日本のバブカは超小型版、小さな小さなおばあさんだ。
それにしても「ババ」なんてぞくぞくする。きっとどこかで日本語と繋がっているのだ。

NYの友人からその名を聞いた時、スカートの話は知らなかったので、「なんでおばあさん?」と思った。おばあさんがつくるからか、と思った。「おばあちゃんのおはぎ」みたいな感じで。

 

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そもそもが、東欧のユダヤ系(Jewish)の家庭でつくられていた、チョコレートはもちろん、卵もバターも用いないもっと質素な、リーンなパンだったかもしれない。周辺にリッチなパンが溢れていて、どの店のどのパンがおいしい、などと言っていられる国と時代に暮らしていても、その感じは想像できる。

 

東欧ユダヤ系移民の多いNYでブレイクして一般の市場に広まり有名になったパンにベーグル(Bagel)があるが、ユダヤ系のパンというと、私はハーラ(Challah)のことも思い浮べる。ドイツのツオップのようにたまご色でほの甘い、編みパンだ。

 

ハーラはユダヤ教安息日の前の晩(金曜日の夜)に家族で食べるディナー用のパンだ。それはヨーロッパなどで日曜日に家族で教会に行った後に食べるクグロフやブリオッシュのようなリッチなパンと同じ役割だなと思う。

家族で囲む食卓。いつもよりちょっと贅沢な、ハレの日のパン。

 

ハーラも家庭で、おばあちゃんがつくっていた。その家の伝統の作り方があったかもしれない。ハーラの余り生地に、そこらへんにあったドライフルーツやスパイスを入れてアレンジメントを施したらおいしくて、ババが、やがてバブカが、生まれたかもしれない。

 

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いずれにしてもいまブレイクしているNYや東京でそれは、非常に贅沢な菓子パンになっている。東欧からアメリカ東海岸へそして極東の東京へ。

 

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マンダリンの後、昨年(NYに行っていながらバブカを取材しなかったことを反省している)私は東京のDean&Delucaでバブカのバリエーションに出合った。そして先日取材した大阪のミル・ヴィラージュにはチョコレートデニッシュのバブカがあった。

おいしいパンはみんなに愛され、世界を旅してしまうのだ。