この夏の記憶に残る一品。

先日、麻布ウグイスで開催された出版記念のイベントは 茶道の茶事の流れを模したもので、わたしはお茶を点てさせていただいた。 そのかたちは、遊び心から始まったかもしれないけれど、皆が真剣に臨んだ。 点心のひとつにパンを使ったものがあった。 生クリ…

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」(講談社)。 風変りなタイトルに惹かれて、読んでみた。 著者は岡山の古民家で日本古来の酒造りの方法に則って 天然の麹菌をいかしたパンづくりをされている 「パン屋タルマーリー」の渡邉格(いたる)さん。 東京で生ま…

カレーのエッセイからパンを考える

先日、面白い本を読んだ。 『アンソロジー カレーライス!!』(PARCO出版)。作家たちによるカレーライスについてのアンソロジー。なかでも、古山高麗雄(1920-2002)という人の文章が興味深かった。 カレーの話だけれど、こういう時(食文化の話を読む時)…

Painについて

フランス語読みでなく英語読みで、パンではなく、ペインについて。 昨年から今年にかけてわたしの内側は、パンに対して沈思黙考していた。 パンの仕事に関わる友人たちは相変わらず、日々の食の愉しみをわたしに直接あるいは間接的に分け与えてくれて、彼ら…

after a long absence

しばらBread Journal Facebookで更新をしていました。 https://www.facebook.com/BreadJournal まもなくこちらも再開します。

2014年、新しい年に思うことと「パン日記」ファイル

あけまして、おめでとうございます。 新年はチクテベーカリーのシュトレンを愉しんでいます。師走の大仕事が終わった後、ゆっくりシュトレンを楽しむ、というのは、以前他のパン屋さんにも聞いたことがあります。わたしは昨年そんなに大仕事はできなかったけ…

『和食の知られざる世界』

日本人の伝統的な食文化、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、和食についてあらためて考える機会を持つ人も多いかもしれない。 タイムリーに、先ごろ出版されたばかりの辻調グループ代表の辻芳樹さんの『和食の知られざる世界』(新潮新書)を…

ベストパン2003-2013、パンとカフェと。

ベストパンがAll Aboutパンの恒例企画になって十数年。 今年グランプリとなったVIRONがベスト10にランクインしたのは、いまから10年前、VIRONのオープンと同じ2003年でした。 当時を振り返ると、メゾンカイザーやPAULなど、メロンパンがなくてバゲットやクロ…

四方田犬彦『ひと皿の記憶』より「バゲット」

いま読んでいる、四方田犬彦『ひと皿の記憶』に「小学校に通っていたころの何が一番の苦痛だったかといえば、給食だった」から始まる「バゲット」の章がある。そうだあのパン(とそれにまったく合わない食べ物)、ひとまわり年が違っても、ひどく共感して読…

バンブーのメレンゲ

昨日のお土産、国立のバンブーのメレンゲとマロンパイ。 国立のバンブーはムッシュソレイユの竹内さんのお店だ。 昔よく、西荻窪のムッシュソレイユに行くと買っていたものを、いまはここで買う。 それにしてもこのメレンゲ「ムラング・プレーン」は、大きく…

ニューヨークのマフィン

ニューヨークが好きで、といっても、もうずっと行っていないから いまのことはわからないのだけれど、80年代から90年代の半ばまで 何度も何度も訪れている。その時、心惹かれた食べもののひとつは マフィンだった。 日本でつくられると、小さくてきめこまか…

ル・プチメックの壁

京都、今出川通のル・プチメックの店内の壁には 店を訪れた人によるさまざまなサインがある。 カトリーヌ・ドヌーヴのサインも。 へぇーそうなんですか。本物? と聞いたのは金曜日の夜のことだった。 教えてくれたNさんは、そりゃ本物でしょう、と言ったも…

and next 10years

ダンディゾンの後、この10年のこと、これからの10年のこと、 考えながら、公園を歩きました。 ダンディゾンの。それから、自分の。 パン・オ・ルヴァン パン・ド・ロデヴ ベーカーズナイフ持っていかないと、公園でパクッ、と食べることも ままならぬけれど…

悲しみのあとで

このパンには思い出の味がある、 港のどこより廃れて混みあった辺りの、 貧しい居酒屋で食べるこのパンには。 ウンベルト・サバ(須賀敦子訳)「悲しみのあとで」の冒頭。 イベントをきっかけに、パンが出てくる詩に出合う機会が多くなった。 おいしくなさそ…

ふぞろいのイチゴとバゲット

最近、安くて小粒の「あまおう」を見つけると、よろこんで買っています。 大きさ、かたちはふぞろいでも、カットすると中まで赤くて甘い、 それは確かに「あまおう」だから。 きのう夫がある店でバゲットを買おうとしたら、クープのかたちなどが あまりにも…

2013年、立春に思うこと。

Bread Journalを読んでくださっている皆さま、いつもありがとうございます。 Facebookページ、清水美穂子【Bread Journal】はおかげさまでフォロワーというのか、読者数というのか、1600を超しました。感謝しております! 気がつけば、すっかりブログ読者の…

秋田のブレないブレッド

金沢の美術館で、そのタイトルに惹かれて手にした 秋田のフリーマガジン『のんびり』。 この、ちょっとシュールな表紙は合成写真ではないそうで、 100年以上の歴史ある花火大会を背景に、休耕田で撮影が行われたそうです。 写っているのは小野小町生誕の地の…

パン好きの鳩

日暮里のエキナカのおいしいパン屋さん、Feltsの前に、鳩がいました。 じっとして動かないので、駅員さんのところへ行って伝えると、 「自分は2年くらいここにいるんすけど、あの鳩ね、ずっといるんですよ。 外に出て行くこともあるかもしれないですけど、こ…

Seasonal Taste

あちこちのパン屋さんで、「夏のパンフェア」なるものが 始まっている。これは世界でも類をみないことだという。 日本のパン屋さんは、季節ものが好きなのだろうか。 料理人や菓子職人が何よりも、旬の素材を上手に活かすことに 力を注ぐように、パン職人も…

◎wagashi asobi

今やどこでも何でも買える時代となってしまったかのようですが、 お世話になった方に東京らしいものを贈りたいと思ったときに、 思いついたのが◎wagashi asobi。 昨日は長原にあるそのお店まで出かけたのです。 老舗で20年の修業の後、今に至る和菓子職人、…

小石原ポタリー

いくつかの伊勢丹の催事のなかで、昨年から注目している ISETAN JAPAN SENSES。 フードコーディネイターの長尾智子さんと福岡の小石原の窯元が 生み出した日常使いの美しい食器をいくつか手に入れました。 平皿は大小ともに「パン皿」です。 おいしいパンを…

ISETAN 「和パン」セレクション

ISETAN STYLE 1月号のジョークのような表紙が目を引く。 和の惣菜にも合わせやすいように仕立てられたパンの 新しいカタチ「和パン」というのはよいとして、 お茶碗に食パンがのっているなんて!! 目を引くから、表紙として成功か……などと面白がる。 伊勢丹…

Rose Bakeryのクリスマスオーナメント

今朝一番に、ローズベーカリーを訪れたら クリスマスの飾り付けをしているところでした。 一両日中にはこの大きなクッキーたちがすべて 天井からぶらさがるのではないかしら。 さて、わたしもローズベーカリーのレシピブック 「ブレックファースト・ランチ・…

感謝をこめて

思いもよらない人から、Bread Journalに関して、お電話やメールをいただくことがある。 今も突然、遠方からお電話をいただいて、感動してしまった。 どうもありがとう。 Bread Journalはかれこれ8年と7ヶ月(!)続いている。 ウェブの宇宙に流れ、作品とし…

アーネカフェとジージョベーカリー

通りがかりに見つけて、ずっと気になっていたお店に ようやく行ったのが夕刻で、朝や昼のパリっと活動的な空気とは たぶん違う、やわらかい空気の流れ。 年配の男性が一人でコーヒーとパンで寛いでいて、 ショウケースにはサンドイッチ、カウンターには素朴…

ウィスキーキャットのお話

某誌の企画で鎌倉にパン屋さん巡りに行ってきました。 パンについては誌面でのお楽しみにするとして。 いくつかまわったうちの3軒で、店内に猫のモチーフを発見するという 偶然の巡り合せがありました。 ウィスキーキャットみたいだね、と編集者のMさん。 ウ…

パンとコーヒーと

今朝、キッチンで、パンを焼いてコーヒーを淹れて、 窓からお隣の庭を眺めていたら、突然思い出した わたしたちのパンとコーヒーと、小さな庭のこと。 Bread,Coffee&Backyard 手入れもせずに何ヶ月も放置したので、 holiday seasonの飾りをつけたまま季節は…

バゲットの最初の記憶にまつわる話

先日あるシェフに幼少の頃のお話をお聞きしていた時、 神戸の叔母さんの家で出合うまで、バゲットなんて見たこともなかった という話が印象的で、わたしも自分の記憶を辿り始めたのです。 でもはっきりとは思い出せなくて。 今日、実家で妹に、バゲットの最…

最後の晩餐

昨晩は「食」のジャーナリストなど、食の仕事に関わる人の 勉強会、辻調塾に出席しました。テーマは最後の晩餐。 先頃『最後の晩餐』(晶文社)を出版された宇田川悟さんの お話を伺いました。 インタビュー集を作っているわたしにとって、これはよい機会。 …

GOOD DOG GOODS

近頃、メロンパンとコッペパンと食パンとチョココロネ が豆頬髭犬の彼女達のブーム。毎日HumHumしています。

西荻周辺にて

用事があって出かけたついでに朝ごはんでも買っておこうと 姉妹が営んでいるかわいいベーグル屋の階段をのぼる。 できたばかりのビストロの情報を、教えてもらう。 お昼がまだだったと思い出してフレンチカレーの店の カウンターに座ると今日はおひとりです…

芥川龍之介の外出

Breadとは関係ないことだけれど サンドイッチでもつくって、コーヒーを淹れて 愉しみたい本、ということでは関係している? 昨日書いた『忘れられる過去』荒川洋治 という本の話を、もうひとつ書きたいので書く。 芥川龍之介の年譜を検証した話があった。 誰…

クリームドーナツの好きなひと

この内容はToday's Favoriteかなと思ったけれども 今読んでいる荒川洋治のエッセイ集、とてもいいので ここで紹介してしまおう。 クリームドーナツという呼び名のパンが好きだ という出だしで始まる。 駅の脇の「コーヒーとパンの店」に通っているという。 …

BREAKFAST LUNCH TEA

紀伊國屋書店で先日、「ローズベーカリーのBLTとかいうレシピブックを探しているのですが」 と言って、店員さんを惑わせてしまいました。ごめんなさい。 頭の中ですっかりBLTとフィックスされていた、このレシピブック。 正式タイトルは『BREAKFAST LUNCH TE…

友達と食事をした夜

日本元気プロジェクトへの情報お送りくださった皆さま ありがとうございました。 賛同するシェフやお店が増える一方で、レストランは お客さまが減って厳しい状況のようです。 外食産業に限らないのかもしれませんが。 先日行った小料理屋さんは、ひっそりと…

Face Bookを始めました

あまりにもいろいろあり過ぎて、2月以前のことが、遠い昔のよう。 3月もようやく終わるので、FaceBookにトライしてみています。 FaceBookユーザーの皆さま、どうぞよろしく。 http://www.facebook.com/mihoko.shimizu 先ほどまで某誌の夏号のコラムを書いて…

新しい日常へ

昼間でも煌々とあかるかったビルや地下道の照明が落ち 看板のスポットライトや電光掲示板が消えているのを見ました。 パン屋さんにパンが普通に並んでいるのを見て、ちょっと ほっとしました。コンビニにもパンがありました。 「パンあります」と貼り紙がし…

返信に代えて

いつも読んでくださっている皆さまに、心から感謝しております。 書き込みくださった方、どうもありがとうございます。 ありがたく、うれしく、そう感じるだけで何もかも大丈夫、 と思えてきます。大丈夫、大丈夫。心の中で繰り返しています。 大きな災害や…

暗闇の灯、のようなもの

東北地方太平洋沖地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。 一人でも多くの方がご無事で、日常の生活に戻ることができますように 被災地の一日も早い復旧をお祈りしております。 京都の友人から安否を気遣うメールをもらった時、東京に住む自…

Birthday Sweets

数日遅れの誕生日を、父が祝ってくれた。 誕生日は母に感謝する日だったから 今年は寂しかったけれど、それは父も同じだ。 その昔、大学勤めをする前、父は編集者だった。 母は広告代理店で翻訳の仕事をしていた。 それはわたしが知らないふたりだけれど、 …

春一番

関東地方に春一番が観測されました。 いよいよ春ですね。 パン種もふくふくと、活発にふくらむ季節。 力強い活動の形跡、自然の描く気泡の模様に 軽く感嘆しながら、今日も感謝していただきます。 Thank you so much,Merci beaucoup! 冬の間携わっていた仕事…

チョコレートとパンとイチゴ

いつも理由をつけてはチョコレートを買っている。 贈ったり、贈られたり。 通りからお店のウィンドウ越しに、美しいチョコレートに見惚れ 食い入るように眺めていたら、お店の人がにこやかに ドアをあけてくれたりして、子供じみていたと照れ笑い。 ヴァレン…

あなたの友達

先日の取材で、パン屋さんの入り口に 犬と猫のイラストのついたかわいい標識を見つけた。 わたしはこういうユーモアのあるサインが好きだ。 NYの路上で「犬のフンを片付けないと罰金$100」というのを見かけたときには あれは本物の道路標識だったけれども、…

Chocolat Ravissant

もうすぐバレンタイン。 クリスマスに買ってもらった引き出しつきの贅沢なボックス入りの ボンボンショコラがなくなってしまって、寂しい思いをしていたところ ”素敵なバレンタインを(ハートマーク)”という言葉を添えた うれしい贈り物をいただきました。 …

2010年の終わりに

今年も残すところあと数十分。 大変な年でした。 でも今日は、実家と病院で、家族の笑顔を見ることができました。 来年は笑顔、これでいきたいと思います。 人を笑顔にする仕事、自分が笑顔になる気分。 笑顔ともっと関わっていきたい。 昨晩、久しぶりにビ…

パンと苦悩と嬉しい気持ち

わたしたちが普段パン、と言っている フランス語のpain(パン)は、英語で読むとpain(ペイン) すなわち、痛みとか苦悩を意味するんですよねと呟いたら、 同席していたひとが、へぇー!それはおもしろいですねーと 優しくウケてくださったのは先日のこと。 …

恋に効くリストランテ、ふたつの箱に……

昨晩、銀座のブルガリ イル・リストランテにて。 テーブルに置かれたパンの箱が美しかったのです。 ラボッシュ(春巻きの皮のような中東の薄焼きパン)、 グリッシーニ、フォカッチャ、スモークチーズの 柔らかなパンにカンパーニュ。国籍にこだわらず、 個…

秋の休日

秋の休日は、姉さま(友人)夫妻のところで過ごしました。 自慢のマシーンでいつもおいしいエスプレッソを淹れてくれる 兄さまから、パルミジャーノ・レッジャーノ+蜂蜜+エスプレッソの粉 というPane + qualcosa di buono(このイタリア語、正しい?)な 組…

職人仕事礼讃

母が亡くなって、日々の仕事を以前よりありがたいと思うようになった。 数えてみたら、十を越す仕事の波がうねりながら押し寄せていて 喪失感の波にザブンとかかって、まじりあう。 わたしはどちらに溺れそうなのか、一瞬、わからなくなる。 今は、泳ぎに集…

夏休みの絵日記とかたつむり

「あなたの昔のブログが出てきたので同封します」 少し前に、宅急便で送られてきた子供の頃の絵日記。 そっとひらくと、あの夏休みへタイムスリップしてしまう。 1972年7月22日 夏休みの絵日記より きょうのあさわたしはつゆくさをとってきました。 家に帰っ…