パンをちぎる、という行為
ナイフの刃を入れるのではなく、指先でちぎるのは、
柔らかいパンだけに許された行為だ。
水分を湛えた生地ならば、半透明の層が柔らかく
伸びて、ちぎれる。
おいしいパンの感触。
ちぎっては、食べ、ちぎっては食べ。
とまらなくなるかもしれない。
ちぎったパンは、なにかいいものに
ディップ(ちょっと浸すこと)することもある。
わたしが時々いく店のナンは、そういう素敵なパンの一種。
ナンだからいっそう、指先でちぎって浸す、という
そのシンプルな行為が、プリミティブな記憶を
呼び覚ますようで、惹かれてしまうのかもしれない。