パンをちぎる、という行為

ナイフの刃を入れるのではなく、指先でちぎるのは、

柔らかいパンだけに許された行為だ。

水分を湛えた生地ならば、半透明の層が柔らかく

伸びて、ちぎれる。

おいしいパンの感触。

ちぎっては、食べ、ちぎっては食べ。

とまらなくなるかもしれない。

ちぎったパンは、なにかいいものに

ディップ(ちょっと浸すこと)することもある。

わたしが時々いく店のナンは、そういう素敵なパンの一種。

ナンだからいっそう、指先でちぎって浸す、という

そのシンプルな行為が、プリミティブな記憶を

呼び覚ますようで、惹かれてしまうのかもしれない。

Diary81102