ベーカリー・ヨアストのお話

日常の慌しさにまぎれていても、

ひととき静かに心を澄ませてみましょう。

森の新鮮な空気を吸ってみましょう。

小鳥のさえずりに耳を傾けてみましょう。

パンの香りを嗅いでみましょう。

この匂いをしっかり覚えましょう。

それはパンのおいしい香りに他なりません。

想像してみましょう。

麦畑が夏の太陽の下で波打っています。

風がそっとその上を撫でていく音が聞こえます。

無数の麦の間を吹き抜けていく音も。

パン文化研究者、舟田詠子さんの講演会で

朗読された、オーストリアのベーカリー・ヨアストの

ブリギッテさんの詩「パンの黙想」が朗読されました。

上記はその一部ですが、パンの香りから呼び覚まされる

自然の場景について、わたしはまた、昨日書いたことを

思い起こしていました。

今日の舟田先生のお話は、オーストリアのベーカリー

ヨアストさんのお話でした。以前このブログでも書いた

アルプスの村の薪窯の再現を日本で行うにあたって

パンの指導にあたったのがエルンスト・ヨアストさんです。

舟田先生はその機会に、ヨアストさんを訪ね、

ヨアストさんのお父さんを訪ね、戦地で兵隊さんのために

パンを焼き、亡くなったおじいさんの話も取材します。

普段は民族学を追究していて、パン屋さんをこんなに

取材することはなかった先生は、

「なぜこれほどまでに、私は感動しているのか?」

と、自身に問いかけます。

それは、ヨアストさんが代々、地域の人々の健康と暮らしを

守ろうとしていて、儲かるとか効率がいいとかいうことよりも

いいパンを焼こうと努めている姿勢に深い尊敬を感じたから。

収穫に感謝し、平和を希求する精神が、代々受け継がれている

のを知ったから。

EUに加盟後、小麦畑が減っている地で、地域の農家の人たちが

もう一度小麦で生きていけるように、また、アレルギーを持つ

人のために、古代小麦有機農法の畑を、少しずつ増やす

地道な努力を続けるヨアストさんのお話が、小麦畑のスライド

とともに、語られました。

遠い国の話、ではなく、世界共通の問題がそこに。

考えることがたくさんあります。

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講演のあとは、北海道のAigues Vivesさん、山梨のWaldさんら

のパンを味わうひととときがありました。

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舟田詠子 パンの世界へ