アーティストとアルチザン
芸術家と職人。
アーティストとアルチザン。
ものづくりをする人と話していて、
話題がそこに行くことがある。
デザインをする人の仕事場にお邪魔して、お茶などごちそうに
なっていたら、「用の美」の話になった。
彼は芸術家であって職人ではないが、過去のある時点で
ひとりよがりになってはいけない、職人のように無心に、
実用性のあるもの、求められ、喜ばせるものをつくりたい、
という気持ちが芽生えたのだという。
職人のような芸術家がいれば、芸術家のような職人もいる。
パン職人のなかにも、たまにアーティスティックな要素を
持ち合わせる人がいて、伝わりやすい、魅せる力を感じる。
話をして、楽しい。それは、悪くない。
素材や食感が、形や色が、香りや味がことさら特別でない
パンのおいしさを伝えたい、と先日書いたが、それは
職人の仕事のことだった。
かつて、
作者の銘の入った高価な美術品ではなく、
無名の職人が手がけた伝統の仕事に光をあてた
柳宗悦という人がいた。素晴らしいと思う。
日々繰り返し、その手でつくられていく日常品を、
良いものをつくるのに、多くを語らない職人のことを、
どのような言葉で伝えよう。
無理にではなく、無色透明の媒体となれたら、と思う。
柳宗悦を目指せるわけもないが、パンの仕事に関わる前から
いつも、課題は心のなかにある。