お弁当のおいしさの理由

実家に帰ったときに持って行って、皆に好評だったお弁当は

いつもその場で板さんが詰めてくれて、炊きたてのご飯を

よそってくれるので、時間がかかる上にちょっと高いのだった。

それでも買う理由は、おいしいからだった。

待っている間に厨房を覗き込んで「だからおいしいんですね」

と言って、その先もいろいろ話してみたかった。

そうしたら、窯や粉袋や酵母はなくても、いつものように

おいしさの向こう側を見ることができそうだった。

心のこもった気配がある店。

わたしはそういうお弁当やさんをいくつか知っている。

今の時代、パン屋さんと一緒で、おいしいお弁当を

つくってくれるところは気が抜けない。

表向き変わらずに続けていくことは、その実、

厨房はどんどん大変になっていくことに違いない。

だから次に行った時は、おいしかったと表明する。

自分が支えられるのは微々たる金額で、言葉の花束は

ちっぽけなものにしかならないとしても。

Diary1003062