お弁当のおいしさの理由
実家に帰ったときに持って行って、皆に好評だったお弁当は
いつもその場で板さんが詰めてくれて、炊きたてのご飯を
よそってくれるので、時間がかかる上にちょっと高いのだった。
それでも買う理由は、おいしいからだった。
待っている間に厨房を覗き込んで「だからおいしいんですね」
と言って、その先もいろいろ話してみたかった。
そうしたら、窯や粉袋や酵母はなくても、いつものように
おいしさの向こう側を見ることができそうだった。
心のこもった気配がある店。
わたしはそういうお弁当やさんをいくつか知っている。
今の時代、パン屋さんと一緒で、おいしいお弁当を
つくってくれるところは気が抜けない。
表向き変わらずに続けていくことは、その実、
厨房はどんどん大変になっていくことに違いない。
だから次に行った時は、おいしかったと表明する。
自分が支えられるのは微々たる金額で、言葉の花束は
ちっぽけなものにしかならないとしても。