シニフィアン シニフィエのパンづくり
先月函館で開催された世界料理学会で、
シニフィアン・シニフィエのバゲット プラタヌ、パン オ ヴァン、パン ド ミ
のルセットと製造工程が、志賀勝栄さんによって発表されました。
その内容がこのDVD。
わたしはその工程、美しい泡のような映像に魅せられていました。
油脂が入っていないのに艶々となめらかに輝いて、
砂糖が入っていないのに甘味がある、
わたしが特に好きなパンの特長を内包するこのパン・ド・ミに、
いったいどんな素材や製法が隠されているのだろう……
と思いきや、何もかもが、とてもシンプルで。
そこで思い出したのが、昔読んだ吉兆の湯木貞一さんの
『吉兆味ばなし』。
大根と油揚げの炊いたのなどが、素人目にはなんとシンプルで
簡単でおいしそうに思えたことだったか。
でも実際には、素材選びから料理人の「加減」や「塩梅」
があったに違いないのです。
それはパン職人のセンス(感覚)にも相通ずるもの。
世の多くのパン・ド・ミ(食パン)の素材や製法は、
志賀さんのそれにくらべて複雑のように思います。
どうしてなのか。それについてずっと考えています。
素(す)で勝負するのは、今の時代、とても難しいこと
なのかもしれません。
いらないものをそぎ落とす潔さと、虚飾のない姿勢で
実直に素材を究めていくこと。
そんな仕事の先に、心をつかむパン・ド・ミ。
世の中にはこんな製法も、こんなパンもあるのか。
料理学会で、多くの方がそう思ったことでしょう。
DVDの構成も、シンプル。
素で勝負したい職人さんの、チカラとなってくれると思います。
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