ブレッドジャーナリストとは

そもそもブレッドジャーナリストという肩書きは、

この仕事への扉を開けてくれた友人がつけてくれました。

この肩書きを掲げて仕事をする時、わたしは

おいしいパンをつくる人のこと、素材や製法のことなど

おいしさの向こうにあるものを言葉にして伝えています。

意識的に、おいしさのこちら側にある「愉しみ」も

含めることがあります。

最初のきっかけとしてAll Aboutがありました。

定期的に書く場所を持ってから、パンに関わるさまざまな人に

積極的に会いに行き、たくさんのことを教わりました。

現在、約11年生。まだ修業中です。

初めまして、の人にはよく、パンが好きなんですね、と

言われますが、わたしはパンそのものよりも、きっと

パンを作る人により興味があるんですね。

ものづくりのセンスを持つ人に興味があるのです。

パンでいえば、酵母を見守り、発酵や成形や焼成の過程を操り、

季節や気候により、素材により、要所要所、五感で見極めて

判断するセンスを持つ職人に。

日々淡々と作り続けるパンで、人生の中の小さな喜びみたいな、

確かな幸せを感じさせてくれる人たちに。

そういう職人さんの手もとを何時間でも見ているのが好きです。

話を伺うのが好きで、質問をするのが好きで、

食べることと同じくらい、書くことが、わたしは好きなんですね。

この仕事を始めた頃、日本はパンの歴史ある国で開催された

国際コンテストで優勝し、その技術レベルは世界最高水準に

達していました。

その一方で、市場、食べ手の側を振り返れば、ギャップがありました。

つまり、パンといえば買ってその場で食べられるもの、すなわち

手軽な簡易食としての総菜パンや、嗜好品としての菓子パンを指し、

パン職人の腕の見せどころであるようなシンプルなパンは、

全体的に見て売れていなかった。

その価値はもっと認められて良いはずなのに、です。

このままでは、真の職人さんたちは絶滅してしまうかもしれません。

そんなことになったら困る。

そこで、わたしは二つのことに力を注ぐことにしました。

職人技術やそこにかかる手間の価値をひろく伝えていくことがひとつ。

そうしたパンを日常的に愉しむ提案をすることがひとつ。

パンと何かいいもの(Bread+something good)をテーマに掲げたのも

この頃でした。

メディアでの仕事に携わる以上、新しいもの、流行のものの取材も

欠かせないし、それもまたおもしろいのだけれども、わたしは

古くから愛され受け継がれてきたもの、ずっと続いていくもの、

人々の日常の暮らしと密接な関係を持ってきたものに、

より大きな興味を抱いています。

なんでも早く安く簡単にできるものが良いとされる時代ですが、

日々、そうした価値観と静かに戦っている職人さんの仕事の魅力を

できる限り言葉に変えて、伝えていきたいと思っています。

日本のパン食文化はもっと豊かになると信じています。