クリームドーナツの好きなひと
この内容はToday's Favoriteかなと思ったけれども
今読んでいる荒川洋治のエッセイ集、とてもいいので
ここで紹介してしまおう。
クリームドーナツという呼び名のパンが好きだ
という出だしで始まる。
駅の脇の「コーヒーとパンの店」に通っているという。
いつも買うので、店の人に「あらあの人また」と
思われないようにほかのパンでカモフラージュする。
ほんとうは3つたいらげたいときに、別のパンも買って
「するべきことはした」と思う。
クリームドーナツはイートインでひとつ、
別のパンをひとつ、そしてしばらくしたら
テイクアウト用の袋からクリームドーナツをもうひとつ
出して、目立たないように、食べるという。
雨の日も犬みたいにびしょ濡れになって通う。
このコーヒーとパンの店は幸せだな、と思う。
50歳を過ぎた。するべきことはした。あとはできることをしたい。
それも、またぼくはこうするなと、あらかじめわかるものがいい。
こんなふうな習慣がひとつあって、光っていれば、
急に変なものがやってこない感じがするのだ
そしてわたしはこの人が好きだと思った。
店の袋に好きな本を入れたり出したりして
「子犬のようによろこぶ」というこの人。