◎wagashi asobi

今やどこでも何でも買える時代となってしまったかのようですが、

お世話になった方に東京らしいものを贈りたいと思ったときに、

思いついたのが◎wagashi asobi。

昨日は長原にあるそのお店まで出かけたのです。

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老舗で20年の修業の後、今に至る和菓子職人、稲葉基大さんが

現在、製造販売されているのは、パンに合う「ドライフルーツの羊羹」

と「ハーブのらくがん」のみ。

お茶事などのために特別な生菓子を作ることがあっても

普段はこの2つ、羊羹は無花果と胡桃と苺の入った1種類です。

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もとカフェだったという店舗は、和菓子屋さん然とはしておらず

どちらかといえば、稲葉さんの家にでも遊びに来たような心地に。

窓辺にはお茶碗やグラスが飾られていました。

ふたつ並んだお茶碗は、パリの店に赴任していた時代の想い出の品

だといいます。

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パリにて。

ある晩、楽しそうな雰囲気に誘われて、とあるパーティにふらりと

立ち寄ろうとした稲葉さんは、招待状がないからと断られてしまうのですが、

そこを食い下がって、中に入れてもらうのです。

アーティストの個展のレセプションだったのでしょうか、そこで

彼は陶芸家のおじいさんから茶碗を買ったそうです。

抹茶の緑が映えそうな、赤い茶碗。

翌日、彼は再び、おじいさんを訪ねます。

その茶碗で、お茶を点てて愉しんでもらおうと思って、

抹茶と自分で作ったお菓子を携えて。

おじいさんは大喜び!

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彼はそれからよく、イベントで、知り合いの店先で、

手づくりのお菓子をふるまうようになります。

多くの人に愉しんでもらうことで、自分の道を進んでいく力を

身につけていったのではないでしょうか。

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あるとき、小さなお茶会を企画したら、茶碗の用意が2つしかない

というのに70人ものお客さんが集まってしまって、蚤の市で

急遽調達したというのが、美しい色とりどりのグラスです。

それにしても足りなかった、と思い出し笑いする、稲葉さん。

さきほどの、ふたつ並んだお茶碗のもうひとつは、

昨年開業したときに、フランスのおじいさんから

お祝いに贈られたものだそうです。

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わたしは今年になって、記事にしていないふたつの素晴らしい

パン屋さんを訪ねました。

その時のお礼に、稲葉さんのお菓子をようやく贈ることが

できました。

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稲葉基大さん

「商店街の外れの、こんな場所で隠れるようにしてひっそり、

やってますけれど」と稲葉さんがぽつりと言ったとき。

「志のあるひとのいるところは、世界の中心になるのです」

思いがけず出てきたその言葉は、わたしが大切に記憶していた

友人の言葉でした。それも、お菓子を贈った先の職人さんを表した

言葉だったから、何かがまるくつながった感覚……!

そんな彼らのように、わたしも、仕事をしていけたらいいなぁ

と思うのです。

パンに合う羊羹

◎wagashi asobi

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きょうは、苺のらくがんのためにお薄を点てましたよ