ホールセールベーカリーとリテイルベーカリー

コムギケーション倶楽部のプレスセミナーで製粉会館へ。

コムギケーション倶楽部とは、小麦食を通じたコミュニケーションでさまざまな活動を行う団体で、メンバーは財団法人製粉振興会、製粉協会、協同組合全国製粉協議会、一般社団法人日本食農連携機構

昨年、講演をさせていただきました。

日本のパンのトレンドと今後の展望

今年は、日本パン技術研究所の井上好文さんのお話と、満寿屋(帯広)の杉山雅則さん、川越ベーカリー楽楽(埼玉)上野岳也さん、石窯パン工房サフラン(千葉)小川佳興さんとパン料理研究家片山智香子さんによるパネルディスカッションがありました。

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井上さんがされた、スーパーやコンビニにパンを流通させるホールセールベーカリーの生産性についての話が、わかりやすく、興味深かった。

1分間に90個の分割を休憩なしでできる生地分割の機械。

人間だと名人でも20個。もちろん休憩なしで作り続けることは不可能だ。

機械は4.5倍も作ることができるのだ。

ただし機械にかけても生地がまともに膨らむように、ストレート法ではなくて中種法で作られるそうだ。お客さんの口に入るまでには1日~3日かかるので、時間が経っても食感を損ないにくいように、軽くソフトに気泡数を極めて多く、その気泡構造を維持するためにも、中種法は有効なのだそう。

一方でリテイルベーカリーはこうした生産性や価格の点でホールセールベーカリーと競うことはできないけれど、お客さんに、窯から出したばかりのパンを楽しんでもらうことはできるし、ホールセールのそれとは気泡構造の違う、発酵にポイントを置いた、食感を楽しむパンをつくることができる。そういう利点を持っている。

まだまだほかにも書きたいことがいろいろあるのだけれど、きょうはここまでに。

マスコミの人に向けた、こうした機会はこれからも、必要と思います。

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ここからは今日のセミナーの話ではなくて、先日の話。

今日、わたしが機械の話にいつもより熱心に聞き入ったのは、つい先日、あるパン屋さんから聞いて、迂闊にも、初めて気がついたことがあったからでした。

それは食パン。

食パンは菓子パンよりシンプルで飽きがこないし、しょっちゅう新商品開発をしなくてすむし、ちゃんと食事になる。パン屋さんはもっとみんな、食パンを作ればいいのに、どうして菓子パンばかりつくるのか?という疑問が長年、あったのでした。迂闊にも。

ざっくりと計算して、菓子パンは12分程度で焼けるのに対し、食パンは40分から45分かかります。窯の占有時間が長いのです。

菓子パン一度に40個焼くとして、50分あれば160個。1個150円として24000円分になる計算です。一方で食パンは、一度に16本程度、それで9000円程度。利益を出そうと思ったら食パンより、断然菓子パンなのだそうです。

食パンは大量生産できるホールセーラーならば、価格を安くしても利益を出せる仕組み。でもリテイルは、難しい。

パンはパンでも、同じに考えてはならない。ホールセールとリテイルでは製造の仕組みも全く違うからです。ひとことでは言い表せない。ほんとうに、そう思います。