辻調塾 in 蔦屋書店~今だから、辻静雄の話をしよう

辻調グループの創設者、辻静雄ライブラリー(全7冊)の1冊目『フランス料理の手帖』(1973)の復刊を記念して、代官山の蔦屋書店で開催された辻調塾に出席しました。辻調塾のことは何度かここにも書いていますが、食やメディアの仕事に携わる人たちの学びと交流の場です。

今回のお話は辻調グループ代表の辻芳樹さんと著述家の湯山玲子さん。

二人の掛け合いも楽しく拝聴しました。

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そのなかでわたし個人、この情報化の時代に仕事を通して感じていることがいくつか話題にのぼりました。

たとえば、今の料理人(パン職人もだとわたしは思う)たちが、情報の波にさらわれて、「常に新しいものをつくらなければならない」という強迫観念を持ってしまっているのではないか、という心配。

そのことについては、書いて伝える場の片隅にいる者として、常に考えていたのです。

たとえば、「おいしい」ということをどうしたら伝えられるか、因数分解していくとおもしろい、という話。

日常的に「おいしい」という言葉をよく発します。でも、書いて伝える時には、ほかの表現方法を使う。それも「噛めば噛むほど味が出る」ではなく。これは好きな仕事です。

対談はいまの仕事を続けていくエネルギーになりました。心づよく思うと同時に、本当の意味で学び続けていきたい、と思いました。

『フランス料理の手帖』は読み始めたばかりですが、40年の古さをあまり感じない。この時代にこんなにフランス料理の知識が豊富な人がいたのだということにあらためて感動する。気障なエピソードは読み物として面白い。堂々としていて格好いい。蔦屋書店の料理書コーナーの勝屋さんが、辻静雄白洲次郎的な日本人、と言われたのはわたしも共感しています。

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数日前に、ある料理人がインタビューを受けるところに同席させていただいたのですが、彼が読みこんでいるこの本も、読んでみたい。次から次へ、わたしも、読みたくなるかもしれません。