第5回辻静雄食文化賞

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6月3日、明治記念館で第5回辻静雄食文化賞の贈賞式が行われました。

辻静雄食文化賞とは、辻調グループ校の創設者、辻静雄さん(1933~1993)の志を受け継ぎ、食文化の発展に貢献した人の活動や作品に贈られる賞です。

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第5回辻静雄食文化賞受賞は書籍と映画に贈られました。

書籍『食と建築土木』著:後藤治 二村悟、写真:小野吉彦(LIXIL出版)と

映画『ある精肉店のはなし』監督:纐纈(はなぶさ)あや 

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『食と建築土木』は日本の豊かな村の風景、「たべものをつくるしくみ」たとえば柿を干す柿屋や大根櫓など23点を建築土木の観点から記録した本で、日本の自然と食文化の関係性を描いています。現代の食についてあらためて考える機会となりそうです。

二村さんは工学院大学建築学部の教授。二村さんは客員研究員。

個人的な話で分野は違うのですが、十数年前ほんの少しの間、工学院大学建築学部でお手伝いをしていたことを思い出しました。これは拝読しなければと思います。

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『ある精肉店のはなし』は江戸時代から続く歴史に幕をおろした大阪の小さな屠場、北出精肉店の記録。大量工業生産化が進む一方で、静かに続く職人技の記録でもあります。

「暮らしを撮るにはお客さんとしてではなく現場で自炊して」北出さん一家と食事をともにしながら撮影をしたと言います。「現場の人たち皆に賞を貰えたような嬉しさ」と涙ぐむ纐纈監督の仕事に心を打たれました。また、いまだに偏見のある目で見られることもあるこの仕事を誇りをもってされている北出さんの「命あるものをいただく、ということを自覚しながら生きて行く」と淡々と語られたその言葉、その仕事。この方もまぎれもない、素晴らしい職人さんだと感じました。

このドキュメンタリー映画『ある精肉店のはなし』は、7月4日(金)、小金井市民交流センター小ホール(JR武蔵小金井南口)にて上映予定だそうです。

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そして、現場で第一線で仕事をされて日々、人を感動させ、さらに精進を続けている方に贈られる専門技術者賞には大阪「本湖月」の穴見秀生さんと京都「未在」の石原仁司さん。

偶然、お二人とも吉兆におられた料理人でした。

「本湖月」の穴見さんは1969年からパリでJAL機内食を作っていたそうですが、辻静雄に「せっかくフランスにいるんだからおいしいものを食べなさいよ。ギャラを残すことはないよ」と言われてギャラを全部お腹の中に収めたのだそう。そんなエピソードがいくつかあって、会場に笑いを湧かせる、とてもチャーミングな方でした。

「身体がある限り、素敵な日本料理を皆さまに、メッセージとして送っていきたい」という穴見さんの店は『ミシュランガイド関西2014』まで、5年間二つ星を継続されているそうです。

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「未在」の石原さんは残念ながら欠席でしたが、お店は東山の円山公園にオープンして10年。『ミシュランガイド関西2014』まで5年間三つ星を継続されているそうです。

「本湖月」と「未在」。わたしは茶道の稽古をするなかで、茶懐石についても大変興味を持っています。いつか勉強に、いや、それよりもたぶん、料理を愉しみに伺うことができたら素敵だなぁと思っています。

この賞は毎年開催されていて、推薦もできるようになっています。

毎年素晴らしい方々や作品との出会いのきっかけがあるので、これからも注目していきたいと思います。

第4回辻静雄食文化賞

第3回辻静雄食文化賞

辻静雄食文化賞公式サイト