セドリック・カサノバのラ・ターブル・ユニーク

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パリでオリーブオイルなどシシリア産の食材を扱う「ラ・テット・ダン・レ・ゾリーブ」のセドリック・カサノバさん来日に伴い、CREMAの勅使河原加奈子さんが明治神宮前のCook&Coにて開催したイベント「ラ・ターブル・ユニーク」に出席しました。

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それは今後日本への輸出が予定されている6種類のシシリア産オリーブオイル、ハーブのブーケ、ケイパー、マグロのカラスミ、マグロのブレサオーラなどのテイスティングの機会でした。

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セドリックさんはイタリア系フランス人で、「シルク・ドゥ・ソレイユ」で綱渡り芸人をして世界を巡ったこともあったそう。後に父方の故郷、シシリアで家族経営の小規模農家を助けたいという想いからこの仕事を始め、現在は60軒以上の農家と契約、古代品種や地元品種の自然農法のオリーブの生産から商品化、販売までを行い、アラン・デュカスなどガストロノミーの料理人を顧客に持っています。

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「オリーブの実が木から離れた時からがわたしの仕事」とセドリックさんは言います。

オリーブオイルに大切なのは、木が健康であるということ、機械で絞る温度が適温であるということ。

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セドリックさんの手がけるオリーブオイルのラベルには「フランチェスコさんの畑のビアンコリーラ種」といったふうに書かれています。シシリアのお年寄りはブレンドしたほうがボディがしっかりして長持ちするというけれど、単一品種で売るのはアイデンティティがはっきりするのだそうです。

まろやかなオイルの中に、青草のような、柑橘のような、苦み、酸味、甘味、いろいろな要素が感じられます。何が何に合うとかいうのは好みの問題で、料理人の感性、イマジネーション次第でさまざまな料理への展開ができそうです。

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シシリアの家庭では4人家族で年間150~200リットルものオリーブオイルを消費するのだそうですが、日本人がどんなオリーブオイルをおいしいと思い、どのように愉しむかを知りたい、とセドリックさん。オイルの他にも、子供の頃から慣れ親しんだ味を携えてやってきて、スライスしたり削ったり、オリーブオイルをまわしかけたり、シンプルな一皿をつくっては、テーブルを囲む料理人や食のジャーナリストの感想に耳を傾けていました。

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セドリックさんはシシリアの気候のもとで、旨味の濃縮されたドライトマトや、まるで干し椎茸のように見えるドライナスもつくっています。

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オレガノやバジルの花束も乾燥させて商品にしています。葉ばかりでなく花も素敵に香るのです。ピエール・エルメはこれでマカロンをつくったのだとか。

セドリックさんの考える、シシリアの料理と日本の料理の共通点は、料理に2、3種類の味の柱が基本としてあって、それらが混ざりすぎていないこと。何の素材の味がするということがはっきりわかるところ、ということでした。

乾燥させた食材のほか、シシリアの塩で保存性を高めた食材もいろいろありました。

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ケイパーは大きさ不揃いの無選別。7月になると虫がつくので収穫を急がなければならない。粒を揃えている時間がない、のだそうです。これをご飯にのせて、ペコリーノを削り、オリーブオイルをかけたご飯は絶品でした。

日本なのでパンでなくあえてご飯にされたそうですが、このテーブルで味わったものはすべて、パンにも合います。もちろん、パスタにも。

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マグロはトンルージュ(クロマグロ)を3週間塩漬けしたブレサオーラをフェンネルとオリーブオイルで。

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ソシソンは内臓なども含めて切り落としのマグロを固めて発酵させたもの。卵巣を天日干ししたカラスミもありました。

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このあたりで日本酒が登場。日置桜の純米吟醸「強力」。さすが日本酒のお仕事にも携わっている勅使河原さん。フレンチやイタリアンにもお燗が、これからのトレンドになってくるかもしれません。

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さて、コリアンダーとミントをニンジンで巻いてシシリアのフレッシュタイプではないリコッタチーズをかけ、レモンとオリーブオイルを絞った箸休め的な一皿など、初めてのような初めてでないような、記憶のどこかにある味だったけれども、「発芽するものは生でも食べる」と勧められた生のヒヨコ豆はかなり青い、初めての味がしました。

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セドリックさんのラ・ターブル・ユニーク。どの食材にも素材の凝縮された旨味とそれを支える塩とオリーブオイルとシシリアの太陽の光を感じました。同席のシェフたちはきっともう頭の中で料理を始めていたはず。近い将来、これらの食材と料理人の感性でどんな一皿が創造されるのか、楽しみです。

最後に。最初のお皿に乗っていた一輪の薔薇のような食材は、ロゼッタペペロンチーノ。唐辛子なのだそうです。このセンス、ロマンチックでした。

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