まいにち、パン。

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アンデルセン名誉マイスター、城田幸信さんのことを綴った『まいにち、パン。』(主婦と生活社)を読む。

ちょっと雑誌のような編集の本だ。

昨年出版された『アンデルセン物語』(新潮社)にはアンデルセン創始者、高木俊介、彬子夫妻のことが書かれているが、もうひとり、このひとなくしてはアンデルセンを語れない、城田幸信というひとの物語がそこにある。

城田さんは16歳からアンデルセンの前身、タカキのパンに入社、デニッシュペストリーや冷凍生地の技術開発に携わったひとだ。

城田さんには、アメリカの製パン企業やフランスの国立製パン学校で、また、デンマークなど海外から招いた技術者に学んだことを、ときに絵を添えて記す、直筆のノートというのがある。「勉強する気のあるひとは誰でも借りて写していいよ」と言っていたというそのノートは、手帳にメモしたことを清書し、更新し続けられたという。

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これをみてみたい。そのまま、本にできたら、きっと素敵だなぁ、などと思いながら、読む。

中ほどに、家庭製パンのいくつかのレシピが載っている。ベーカーズパーセントなど、初歩的なところから説明がある。テーブルロールやイギリスパン、デニッシュペストリーなど、ベーシックなパンのつくりかたが、丁寧に説明されている。

パンは失敗したら、もう一度やってみよう、というのではなくて、なぜ失敗したのかを考えることでうまくやけるようになる。いまやっていることは、何のためにやっているのか、理由を考えることが大切。そんな、あたりまえのようでいて、とても大切なことが書かれている。

真のパン職人のことばだ。

こういうひとの仕事のおかげで、今の日本のパンがある。

城田さんは今年の5月に永眠されたそうだ。心より、ご冥福をお祈りします。

冒頭には山荘でパンを焼いて休日を過ごす、優しそうな城田さんの笑顔がある。