田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」
田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」(講談社)。
風変りなタイトルに惹かれて、読んでみた。
著者は岡山の古民家で日本古来の酒造りの方法に則って
天然の麹菌をいかしたパンづくりをされている
「パン屋タルマーリー」の渡邉格(いたる)さん。
東京で生まれ、31歳でパン職人になることを決意し、奥さんとともに
千葉で店を開き、東日本大震災をきっかけに家族で岡山に移住した。
パン屋さんになるきっかけや天然菌を追究していったその道筋には
渡邉さんならではの力強い物語がある。
開業物語と並行して渡邉さんはマルクスの『資本論』の超訳を伝える。
今の世の中の仕組みを考えさせられる。
わたしは、最近読んで、地域経済の自立について考えた、
『里山資本主義』(藻谷浩介・NHK広島取材班)のことも思い出した。
渡邉さんは地域通貨のようなパンを目指すと言う。
「つくって売れば売るほど、地域の経済が活性化し、地域で暮らす人が
豊かになり、地域の自然と環境が生態系の豊かさと多様性を
取り戻していくパン」。
その仕事=生き方に心をつかまれた。
いつか、岡山に行って、タルマーリーのパンを食べてみたいと思う。