Today's Toast【1】まっさらな気分の朝に

Today is the first day of the rest of your life.(きょうは残りの人生の最初の一日)。

意識するしないに関わらず、今生きている誰もが毎朝、残りの人生の最初の一日を迎えています。

きょうから新しい自分で。そんな決意をした、まっさらな気分の朝、手を合わせ、背筋を伸ばして「いただきます!」と言いたいのは、小麦粉と水と酵母と塩でつくられた、ごくシンプルなパンです。

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素材はシンプルの極み。しかし酵母の世界は複雑です。
それがパンのおもしろさで、職人技の見せどころでもあります。

たとえばシニフィアンシニフィエの「パン・ド・ミ」。

ホップと米麹の酵母、レーズンの酵母、そしてたっぷりの水が、熟練した職人さんの管理のもと、低温の環境で長い時間をかけて小麦粉の生地を発酵させ、炊きたての新米に感じるそれと同じような甘味と旨味を引き出し、水分をたたえた、艶のある半透明な気泡を持つ、しっとりもっちりとしたパンをつくりだします。

その食感と、こうばしい小麦の香りを存分に味わうには、スライスしたパンの表面にさっと火が通るように、高温で短時間、トーストすることが大切です。

シンプルにして味わい深いこのパン・ド・ミがあると、バターやジャムを用意していても、つけるのを忘れてしまったりする。一口で五感が目を覚まし、人生の、新しい一日の始まりが勇気づけられるのを感じます。

そうした目に見えないチカラはきっと、修行僧のように暗いうちから日々のパンに真摯に向き合う職人さんのおかげでしょう。

このパンを食べる朝に思うことはいつも、こんな良い仕事がしたいな、ということです。わたしはパン職人ではないけれど。

きょうから頑張ろうという朝に。背筋がすっと伸びる、そんなパンです。

 

※以前、トースト総研(現在は終了)で連載していたトーストに関するコラムに加筆訂正してBread Journalであらたにスタートします。まずは第一回です。

 

シニフィアン・シニフィエ

最近、二子玉川の髙島屋店限定食パンを食べました。パンドミの兄弟分。メープルのやさしい甘味が加わった少しリッチなパンですが、寒い冬にはそんなパンもおいしいな、と感じます。