今、ここにレモンパイがある
自分の年齢をほとんど意識しないで生きているので
何かの拍子に親の年齢を意識したときなど、まるで
浦島太郎にでもなったように、途方に暮れてしまう。
昔観た映画『ストレイト・ストーリー』で、おじいさんが
こんなことを言っていたのを思い出す。
「年をとって辛いのは、若いときのことを覚えていることだ」
わたしはおばあさんになったら、思い出を楽しみに
生きようと思っていたので、それは辛いのだろうか?と
その映画を観たとき、思っていたのだった。
最近、親が病気をして、少しだけわかる。
家族みんなが元気だった子供の頃の、たとえば
夏休みの幸せな記憶が押し寄せてくるようなとき。
感傷的になり過ぎるときは、目の前にあるものを見つめよう。
ここに大好きなレモンパイがある
……みたいに、今、感謝すべき現実を。
過去に執着するのも、未来を思い煩うのもやめにして、
とりあえず、レモンパイでも食べて、元気を出そう。