職人仕事礼讃
母が亡くなって、日々の仕事を以前よりありがたいと思うようになった。
数えてみたら、十を越す仕事の波がうねりながら押し寄せていて
喪失感の波にザブンとかかって、まじりあう。
わたしはどちらに溺れそうなのか、一瞬、わからなくなる。
今は、泳ぎに集中しよう。
愛情をもって、職人のように仕事しよう。
「ほんとにパンが好きなんですね」とよく言われる。
「ほんとにパンが好き」なことに間違いはないけれど
愛好家でもマニアでもなく、毎日、お米のごはんで
一汁三菜、季節のものを作って食べている。
おいしいパンを食べに行こう、といわれるより
おいしいお酒を飲みにいこう、といわれるほうがうれしい。
何より好きさ加減、酔狂さでいったら、きものが好きだ。
ただわたしは、パンに対する変わらぬ想いがあり、
それが、上記のすべてにも共通しているようだ。
伝統的なものが好きということ。
手仕事の時間、それをゆっくりいとおしむ日常が好きということ。
そこにある、名も知れぬ職人の存在を敬う気持ち。
職人仕事礼讃。