ブレッド&サーカスのその後

All About読者が選ぶ、年に一度の企画、ベストパン

そもそも読者がどんなパン屋さんを好きなのか知りたいという個人的な興味から始まった企画で、その年に印象に残ったパン屋さんやいつも通うパン屋さん、好きなパン屋さんについて投票してもらうものです。集計はAll Aboutのシステムの方にしていただいて、重複票などははじいてデータをいただいています。これは、それこそ超個人的な感覚である「おいしさ」とか売上でランキングしているわけではなく、10年ほど続いている企画です。

そのなかで、2007年から2010年まで4年連続グランプリを獲得し、昨年からは永久ベストパン店として殿堂入りしたブレッド&サーカス。

今年もベストパンの記事を作成するにあたり、永久ベストパン店の近況も記載したいと思い、ブレッド&サーカスの寺本康子さんにお聞きしたところ、素晴らしいメールをいただきました。

許可を得て、全文掲載いたします。

以下、ブレッド&サーカス 寺本康子さんからのメールです。

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All Aboutベストパンで殿堂入りをさせていただいてから、

ブレッド&サーカスは大きく変化しました。

東日本大震災の影響は、震災後すぐに、ただちにあらわれました。

震災の津波の影響で原子力発電所の事故があり放射能漏れの懸念がでてから、

なお一層の影響がありました。

それらは幅広く、また先の出口が見えないものでした。

もっとも大きな変化は粉を変えたことです。

粉はストレートに商品の味に影響を与えるものです。

通常営業を続けながら、すべての粉を変えることは気力体力を消耗しました。

粉の産地を変更したことを、風評被害の一端を担うかもしれないと思い、公表せずにいましたので、メールやお電話でのお問い合わせがたくさんありました。

こちらも気力体力を消耗しました。

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ブレッド&サーカスの立地は都内からさほど遠くないにもかかわらず、

周囲に気を取られることなく自分の道を進むにはほどよく静かな場所です。

海外からのベーカリーの出店ラッシュを遠いことのように見ていました。

日本の社会におけるベーカリー人気の勢いを強く感じました。

それでもブレッド&サーカスには少しずつ固定客が増えてまいりました。

ありがたいことです。

ここ数年の特徴としまして、お客様の年齢層の推移があります。

平均年齢が高くなりました。

お客様の70%以上は50代以上のお客様が占めています。

50代以上の年齢層の方々が遠方からブレッド&サーカスのパンをもとめてご来店してくださることに、たいへん感激しています。しかもたいへんにパンに造詣が深いといいますか、パンに詳しい大人の方々が、この日本にはたくさんいらっしゃるのだと実感して、たいへんにうれしくたのもしく感じます。

それらの方々は、損得なくこころからパンをたのしんでいらっしゃいます。

食事の大切さをよくご存じで、家族で、あるいは友人知人との食事の時間をとてもたのしんでいらっしゃいます。

家庭料理がつくられなくなったと聞くようになって久しいですが、かつてのものとは違った形での家庭料理や家庭での食事の形態に、すこやかでシンプルでなんでもない、でもおいしいというハード系の食事パンは、確実に必要とされています。

それはまさにブレッド&サーカスにとって望んでいる方向性です。

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とにかくカンパーニュ系の人気には目を見張るものがあります。

ブレッド&サーカスのカンパーニュは、日持ちのこと、内層のことなどを考慮して、かなり大型ですが、ひょいひょいと大人の方々がカンパーニュ系のパンをふつうに購入してくださる様子を拝見していると、ほんとうにうれしくなります。

のちほどお客様から、○○と食べたらおいしかったわ! ○○とサンドイッチにしたらおいしかったわ!とご報告をいただきますが、その瞬間のよろこびはたいへんなものです。うれしいです。

数年前と違って最近のお客様は、カンパーニュ系にもさまざまな「味わいの違い」がある、ということをよくご存知です。

以前はどれも同じと考えていらしたようです。でも今はそれぞれのパンが鮮やかに味が違うということをよくご存知です。たのもしいと思います。

どのパンも同じ生地で作るということが当たり前であった、あのころのパン屋さんと今は違うということをよくご存じであることに、わたしは強い満足感を感じます。

それもやはりブレッド&サーカスの真骨頂と申し上げてよいと思います。

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最近はブレッド&サーカスのパンを自由に召し上がっていただいています。

サンドイッチ、シチューやスープと、朝食として、といった基本のパンの食べ方はもちろんおいしいです。

しかし今はインターネット経由でたくさんの情報があり、またレシピ提供サイトも充実していますので、さまざまにパンをたのしんでいただいています。

これはすばらしいことだと思います。

これもまたブレッド&サーカスにはたくさんの違った種類のパンがありますので、ブレッド&サーカスへの需要が高まることになっているのかもしれません。

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最近気に入っているパンの食べ方は、保存食を上手に利用する食べ方です。

燻製、ピクルス、パテ、ジャム、オイル漬け、干した野菜、ソース類、ディップ類、フィキシング、チーズ、生ハムやハム類、ありとあらゆる保存食を(手作りしたものがやはり心も潤うパン食になるのですが)、じょうずに取り入れながら、パンをたのしむ食事をするとHappyになります。

たとえば、牡蠣のオイル漬けをのせて、サラダと豆類の煮込み。

たとえば、パテをスリランカカレーと野菜のマリネと。

たとえば、鶏肉と野菜の炒め煮とかぼちゃのグラタンとあっさりのスープと。

といったように。

パン食でこころが潤うことが、Happyでたいせつな1食を豊かにしてくれます。

(写真は今年新しく販売をはじめた「ベーシックカントリーブレッド」550円)

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寺本康子さん

どうもありがとうございました。