松久信幸さんとNOBUレストラングループの田原史啓さん、トークとディナーの夕べ

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日本パン菓新聞社の週刊媒体「速報・製パン情報」創刊50周年を記念して虎ノ門の「NOBU TOKYO」で開催された、”世界で最も有名な日本人シェフ”松久信幸さんとNOBUレストラングループのコーポレートディレクター、田原史啓さんによるセミナーとディナーの夕べに出席した。

 

松久信幸さんは新宿の松栄鮨で修業後、ペルー、アルゼンチン、アラスカでのレストランの経験を経て、87年にLAのビバリーヒルズに創作日本料理のMatsuhisaを、その後俳優のロバート・デ・ニーロさんとニューヨークにNOBU New York Cityを開店、現在では世界12カ国、30店舗以上のレストランを経営している。 田原史啓さんは各店がNOBUさんのフィロソフィーを守っているかチェックし、サービスとクオリティを向上させるべく、教育に力を入れている。

 

質疑応答では主に海外での事業展開をする時に誰でも必ず行き当たる問題についてのやりとりがあった。

国が変われば料理の材料も、国民性も働き方も異なってくる。たとえば面接では年齢や国籍を先に履歴書に書いてもらって落とした場合に差別として訴えられる可能性があったり、面接に2時間平気で遅れて来る人がいたりするという。

 

NOBUさんは「違う、ということを肝に命じるということ、頭にこないことが大事」と言った。 素材についても、海外においては日本と全く同じようにというわけにはいかない。 そこでは「日本食はこうでなければいけない」とは言わない。 もちろん、汁ものなどでベースが間違っている時に注意はするけれど、たとえば海外のスタッフが味噌や醤油を使って作りあげる料理から自分が学ぶこともあるので、あえて「こうしなければならない」とは言わないのだ。

「最低限のフィロソフィーは必ず教育します。人は必ず育つんです。それについてこられる人も、ついてこられない人もいると思いますが、ついてこられる人を一人でも多くするのが我々チームの仕事」。

 

わたしは、NOBUさんが最も大切にされているその”最低限のフィロソフィー”とはどんなことなのか、尋ねた。

 

その国の環境、その料理人の能力のなかでベストな料理、ベストなサービスを心をこめてする、ということがNOBUさんの答えだった。自分のベストを尽くすのがプロ。その人のべストが尽くされているのなら、プロとして認められる。そこに終わりはない。努力あるのみ。

 

短い時間だったけれども、海外での事業展開をする出席者も少なくない会場で、NOBUさんの言葉や笑顔はいいヒントになったに違いない。