ドイツコッペと職人の言葉

Diary111005

あの日、ドイツパンとドイツ菓子のお店に行って

気がついたら黒いパンではなくて

白いパンばかり選んでいたのは

なぜだったんだろう。

海風に吹かれて、浮かれて、日差しに晒されて、

店の扉を開けたときには、心がかろやかに

そしてまっさらになっていたのかもしれない。

そういうとき、心もからだも、複雑なものを欲しない。

最初に目を惹いたのが、ほかであまり見かけない

このまるまるとした白パンだった。

今朝のパンはドイツコッペ。

食パンと同じ生地を直焼きしているシンプルなパン。

雨が降った後の朝にふさわしい、澄んだ味がする。

お話くださった職人さんの瞳も澄んでいた。

見栄やはったりのきかない職人の仕事。

ゆっくりと丁寧に紡ぎだされる言葉に無駄がなく

誠実なところが、そのパンとおなじようだった。

間合いがあり、ICレコーダーを必要としない。

ただ書き留めれば、美しい文章になっていくようだった。