Seasonal Taste

あちこちのパン屋さんで、「夏のパンフェア」なるものが

始まっている。これは世界でも類をみないことだという。

日本のパン屋さんは、季節ものが好きなのだろうか。

料理人や菓子職人が何よりも、旬の素材を上手に活かすことに

力を注ぐように、パン職人もそれを活かしたいと考えているだろうか?

なかにはそういうことに喜びを持って取り組む

アーティスティックな職人さんもおられることだろう

(それはそれで、素敵なことだと思う)。

でも、現状は、商品開発に悩む職人さんは多い。

それなら、消費者が求めるのだろうか。

料理やお菓子に四季があるように、パンにも四季が求められて

いるのだろうか。

毎年、蒸し暑い夏にさっぱり食べられる爽やかな味、

スパイシーな味、そして冷やして食べるのどごしのよい味が

話題になる。

わたしも、そうした季節の創作パンについて、おもしろいので

興味はあるし、求められるまま、おいしそうだとか、キワモノだとか、

これはどういう意味ですかとか、こういうのはどうだろうとか、

質問したり、個人的な感想を述べたり、時にはアイデア

伝えたりすることがある。

個人的スタンスは、変わらない。

パンは、小麦粉と、水と、酵母と、塩だけのパンの姿が

一番格好いい、と思う。

でも、それだけでは、まだ売れないのかもしれない。

そのとき、足りないのは、パン屋さんの商品開発力ではなくて

消費者側の経験値であり、楽しみ方のセンスではないか、と思う。

わたしはパンと同じように、ご飯が好きだ。

米はご飯として食べるのがいちばん好きだし

旬のおかずと一緒にいただくことに幸せを感じる。

パンは多くの日本人にとってご飯のかわりにはならない。

でも、パンも、ご飯のようにして無地のまま、スッピンのまま、

季節の食材や料理を添えて、食べることはできるように

なってきていると思う。

すこしずつ、すこしずつ

新しい食文化は、根付いていっている、と思う。