『おいしいサンドイッチ300種』と『挟むための剣術』

堀江敏幸さんの『バン・マリーへの手紙』という
本の中で紹介されていた50年も前の古い本、
『おいしいサンドイッチ300種』(榊叔子著)に
ものすごく興味が湧いたので
図書館で探してもらって、ようやく手にした。

ページを繰ると、
懐かしの「バタ」や「メリケン粉」に再会して
しばし、ノスタルジックな気持ちに包まれる。
母の雑誌や料理本を眺めていた子供の頃の感覚が蘇る。

わたしがこの本を手にする一番のきかっけになったのは
堀江さんも引用されていた、「パンの切り方」のところ。

 

「包丁の背に自分の鼻の先が、パンを切りおわるまでのつかつて
いる感じの、大体直線の姿勢であれば、面白いように、薄く、
まがらないで切る事が出来ます。しかし、切りながら途中で顔が
まがりますと、パンがまがつて切れる事になります」

 

なんだか笑ってしまうのだけれど、
今度やってみよう、と素直に思う。

 

それにしても、昭和30年代にこの著者はすでに
タラコや納豆を使った、最初は勇気がいったであろう
サンドイッチを紹介しているのだからすごいなぁ。

300種のサンドイッチ。楽しく想像しながら読んでいる。

 

さて、堀江さんも榊さんもそれぞれに書かれている
おいしいサンドイッチの極意は、
まずは満足のいくパンの調達にあり、というようなことだった。

 

手軽なサンドイッチも、こだわれば難しい。
でも、こだわる手間ひまもまた、楽しいのかもしれない。