ダンディゾン再訪
10年後に、という名を冠してスタートしたダンディゾン。
10周年を迎えたら、厨房の壁時計が床に落ちて割れた。
でも、大丈夫。パンを焼く木村昌之さんの体内にはより正確な時計がある。
時計だけではなくて、温度計も湿度計もある。
彼は数字に頼らないで、常にパンの状態を肌で感じている。
厨房は楽しげな表情が溢れていて、温かかった。
窯の温度で暖かいのではなく、共有できない情熱で暑苦しいのではなく
職人チームの醸しだす空気が、なにかとても心地よい温度だったのだ。
10周年を迎えたらもう片方の目も塗りつぶす予定だったダルマには
さらなる10年の願いが託されて、目の淵だけ線で描かれて
大事にされている。
大事にすると言えば、木村さんは20年も同じベルトを締めているから、
わたしは、17年目のTシャツを着て、正式に取材に出かけた。
いくつかの大切な質問を抱えて。
最近、10周年を迎えた店の取材が続く。
近いうちに、その素敵な感じを、文章にすると思う。