とにかく、つくり続けること。どんなことがあっても。

このひと月。冬から春へのあいだ、いろいろなことがあって
もうひと月も経ってしまったんだなぁと思う。
昨日、取材先で聞いた職人の言葉が心にしみる。

とにかくつくり続けることです。
どんなことがあっても、焼き続ける。
それが大事だと思っています。
パン屋は、震災があっても、たとえ親が死んでも
そのことを噛みしめながらでも、パンを焼くんです。
20年、30年と焼いているひとほど、どんな状況でも
そうやってお客さんのために、つくり続けている。
すきなんですよ、つくるのが。

f:id:mihokoshimizu:20160417181932j:plain

 

3月1日に父が倒れて、わたしのひと月は夢のように過ぎた。

家族に不幸があった、わけだけれど、
それが「不幸」というものなのかはわからない。
半世紀ほど、ずっと幸せだったのだ。
だからいま、ひどくかなしいだけだ。

日々は、それほど不幸ではない、と思って生きている。
幸せに生きられるように生み育ててもらったのだ。

だから、わたしも、書き続けていこう。

 

3月のBread Journalのブランクをお詫びします。
ここのところの新しい記事はこちらです。

f:id:mihokoshimizu:20160417180952j:plain

【パン連載 Vol.13】春の週末は、多摩のパン屋さんに出かけよう
「ぶーるぶーる(Boule Beurre Boulangerie)」でフレンチスタイルのかわいいパンを調達する

http://www.enjoytokyo.jp/style/106423/

f:id:mihokoshimizu:20160417181825j:plain

 

All About 15周年!

年に一度のAll About ガイドの集まり、Red Ball Japanが開催されました。

 

All Aboutは15周年。今でもパン業界の方に「All About Japanの清水さん」と
サービス開始当初(2000-2004)の社名&サイト名で呼ばれることがあり
そうすると、古くから知ってくださっている方だな、とおもいます。

 

15年前に思った通り、パンの世界は広く深く、そこに関わるひとたちはみな、
温かく、おもしろいです。All Aboutガイドになったため、そのひとたちに
より深くかかわる人生となりました。

 

パン業界の皆さま、いつも興味深いお話とおいしいパンと、貴重な時間を
ありがとうございます。

読者の皆さま、いつも楽しみにしてくださって、励みになっています。
どうもありがとうございます。

All Aboutには、15年前、わたしにAll Aboutパンという場をまかせて
くださったことに、今でも心から感謝しています。

 

Red Ball Japanでは、15周年を記念して15の表彰がありました。
「記事のお手入れマメで賞」(ウェブではこの作業がだいじ)や
Googleに愛されたで賞」や、「最優秀新人ガイド賞」など。

 

 わたしはなんと「ガイドが選ぶ、尊敬するガイド」賞をいただきました。

f:id:mihokoshimizu:20160229170616j:plain

 

選んでくださった皆さま、ありがとうございました。
この名誉に恥じぬよう、精進します。

f:id:mihokoshimizu:20160229170535j:plain


これからもどうぞ、よろしくお願い申し上げます。

清水 美穂子 All About

 

今流に提案された伝統に気軽に触れられる場所

Let's ENJOY TOKYOで、日本橋をご案内しました
(パンのお話はここでは少しだけです)。

f:id:mihokoshimizu:20160229162001j:plain

東京メトロ134駅で現在配布中のフリーペーパー
『TOKYO TREND RANKING』に掲載されています。

 

一部、Let's ENJOY TOKYOのサイトでもご覧いただけます。

Let's ENJOY TOKYOは東京のオデカケをテーマにしたサイトですが、

そこでキュレーターを務めることになったとき、最近気に入っている

オデカケの場所として日本橋を挙げていました。

 

f:id:mihokoshimizu:20160229162400j:plain

日本橋は、今流に提案された伝統に気軽に触れられる場所です。

 

きものがすきで、週に一度はきもので過ごしています。

パンとの関連性は、伝統と職人技かな。

 

Let's ENJOY TOKYO
『清水美穂子のBread+something good in Tokyo』

仁瓶さんのリュスティック

インタビューを受けたときに、すきなパンは、と聞かれたので、
職人の人生が透けてみえるようなパン、と答えたあと、
ドンクですきなパンは、と聞かれたので、
仁瓶さんの焼いたロデヴやリュスティック、と答えた。 

f:id:mihokoshimizu:20160229010410j:plain

かぐや姫の願い事か。
なかなかたべられないものだ。
希少だから情報誌なら却下されてしまうにちがいない回答だ。 

しかし、今回はよくある「オススメコメント」とは異なり、
わたし個人をクローズアップするインタビューだったので
ライターさんがうまく記事にしてくださった。

 

インタビューはいつもする立場であって、されることはすくない。
得意ではないが、逆の立場というのは勉強になるとわかった。

 

話したことと違う文章になっていると、衝撃を受ける。
自分もそんな思いを相手にさせてはいまいか。

 

いそいでなおしながら、がっかりしている自分がいる。
伝える仕事をする者として、伝えるの力がなかったのだ
という事実を、つきつけられることになるから。

そうした経験も、有り難いことだとおもう。

f:id:mihokoshimizu:20160229010907j:image

記事を読まれた仁瓶さんが、奇跡のように連絡をくださった。

あまりたべる機会ないでしょ、こんど焼くから、都合がついたら
取りにきて、と言ってくださったので、飛んで行った。

 

リュスティックは、記憶の通り、素晴らしい味がした。
それは細長く焼いたものだった。クラストは薄くパリッと焼けて
水分をたっぷり湛えた半透明の気泡を持つクラムを包んでいた。
もっちりとしていながら、どこまでも軽やかで、口の中で甘く、
やがて儚く溶けた。

 f:id:mihokoshimizu:20160229010824j:image

 

1954年にレイモン・カルヴェル教授が伝えたというバゲットは
『Bon Painへの道』でも紹介されている。
それもまた、冷凍保存する間もなく、夢のように消えてしまった。

 

f:id:mihokoshimizu:20160229010951j:image

 

すごくトクベツな素材を使っているわけではないのに、トクベツなパン。
それは原材料の産地や銘柄、配合や製法だけによるものではないだろう。
職人の技によってトクベツになるのだ。

 

f:id:mihokoshimizu:20160229010149j:plain

まえにリュスティックをたべたのは、出版記念の集まりのときだった。

ドンク仁瓶利夫と考えるBon Painへの道: Bread Journal

今回インタビューしていただいた記事

『月の本棚』清水美穂子のBread-B

パン屋さんっぽくないル・プチメックのサイトで、
ブレッドジャーナリストっぽくないコラムの連載が始まりました。

http://lepetitmec.com/archives/author/mihoko/

f:id:mihokoshimizu:20160228224508j:plain

最初に話をいただいた時のこと。
何を書いてもよいけれど、禁止事項はル・プチメックのパンの話
と聞いて、ル・プチメックのパンは個人的にすきなので、
その魅力についてならいくらでも語れるのにな、とおもったけれども、
求められていることはべつにあった。

 

サイトをみると、素敵なウェブマガジンになっている。
ル・プチメックの隊長、西山逸成さんの書くことはもちろん、スタッフも
さまざまな執筆者のコラムもおもしろい。


ここは、ル・プチメックの隊長、西山逸成さんの+something goodの場所なのだ。

 

西山さんは読書家だ。読書好きは忙しくても食事をするみたいに本を読む。
西山さんとは昔から、読んだ本の話をよくするので、
それならわたしは本について書こうと考えた。

 

わたしは空を眺めるように本を読む。

f:id:mihokoshimizu:20160228224018j:plain

書く場所がまたひとつ、できてしあわせです。

山のパン屋さん

一日、冬休みをいただいて河口湖へ。
伊豆箱根方面に行く時にブレッド&サーカスに寄るような感じで
あきる野のラ・フーガス経由で。久しぶり。

そして河口湖の帰り道……

 

f:id:mihokoshimizu:20160228220256j:image 

山道で、小さな看板を見つけて引き返す。
なんとなく惹かれたので、車を降りて、敷地に入っていくと、
パン屋さんも、レストランもクローズしているようだ。

 f:id:mihokoshimizu:20160228220410j:image

すると、店主らしき男性が店の中から出て来る。

そのひとはこの店のシェフで、なぜいまクローズしているかの話になり、
きょうはこの家にとってどんな日かの話になり(素敵な話だった)、
いつの間にか店に招き入れられ、パンを焼くマダムも帰ってきて、
夫の料理にあわせるパンを焼くために、レイモン・カルヴェル先生の本で
勉強したのだと教えてくれた。

f:id:mihokoshimizu:20160228220536j:image
そして、お店はクローズしていたのに、わたしの手にフランスパンが1個。
通りすがりだったのに、なんて親切な。

 

こういうのは、予定のない旅のおもしろさだ。
春には再開されるというので、次の機会にはきっと伺おう。

 

パンは翌日焼いてたべた。2日は経っているのに香ばしくて旨みのある、
料理のためのパンだった。

クロナッツの次なるハイブリッドスイーツ

マンダリン オリエンタル 東京のグルメショップで
新しいパンに出合う。

 

f:id:mihokoshimizu:20160218233329j:plain

MO Cruffin(Mandarin Oriental Croissant Muffin)

ドミニクアンセルベーカリーのクロナッツ(クロワッサンドーナツ)
みたいなハイブリッドスイーツ、その名もクラフィン(クロワッサンマフィン)。

クラフィンはクロワッサン生地をマフィン型で焼いている。
焼き上がったら、クリームを絞ったりトッピングを施したり。

いま、ラズベリーカスタード(ラズベリージャムとカスタードクリーム)
プラリネ(キャラメリゼしたヘーゼルナッツクリーム)
コーヒー(コーヒークリームとクリームチーズフォンダン)
があるが、バリエーションは無限大にちがいない。

f:id:mihokoshimizu:20160218233607j:plain

クラフィンはサンフランシスコ発祥。
マンダリン オリエンタル 東京は、バブカといい、他ではなかなかみかけない
スペシャリテがいくつもあって、目が離せない。

ブーランジェリーレカンにも、ベーカーズマフィンなるものがあった。
ベーカーズマフィンはブリオッシュだ。

お洒落の達人がドレスダウンするように、伝統的なフレンチ一辺倒だった
パン職人たちが、その技術をもってアメリカンアイテムに臨んでいる。

自由に、ますます洗練されて。

mihokoshimizu.hatenablog.com