とにかく、つくり続けること。どんなことがあっても。
このひと月。冬から春へのあいだ、いろいろなことがあって
もうひと月も経ってしまったんだなぁと思う。
昨日、取材先で聞いた職人の言葉が心にしみる。
とにかくつくり続けることです。
どんなことがあっても、焼き続ける。
それが大事だと思っています。
パン屋は、震災があっても、たとえ親が死んでも
そのことを噛みしめながらでも、パンを焼くんです。
20年、30年と焼いているひとほど、どんな状況でも
そうやってお客さんのために、つくり続けている。
すきなんですよ、つくるのが。
3月1日に父が倒れて、わたしのひと月は夢のように過ぎた。
家族に不幸があった、わけだけれど、
それが「不幸」というものなのかはわからない。
半世紀ほど、ずっと幸せだったのだ。
だからいま、ひどくかなしいだけだ。
日々は、それほど不幸ではない、と思って生きている。
幸せに生きられるように生み育ててもらったのだ。
だから、わたしも、書き続けていこう。
3月のBread Journalのブランクをお詫びします。
ここのところの新しい記事はこちらです。
【パン連載 Vol.13】春の週末は、多摩のパン屋さんに出かけよう
「ぶーるぶーる(Boule Beurre Boulangerie)」でフレンチスタイルのかわいいパンを調達する
http://www.enjoytokyo.jp/style/106423/
All About 15周年!
年に一度のAll About ガイドの集まり、Red Ball Japanが開催されました。
All Aboutは15周年。今でもパン業界の方に「All About Japanの清水さん」と
サービス開始当初(2000-2004)の社名&サイト名で呼ばれることがあり
そうすると、古くから知ってくださっている方だな、とおもいます。
15年前に思った通り、パンの世界は広く深く、そこに関わるひとたちはみな、
温かく、おもしろいです。All Aboutガイドになったため、そのひとたちに
より深くかかわる人生となりました。
パン業界の皆さま、いつも興味深いお話とおいしいパンと、貴重な時間を
ありがとうございます。
読者の皆さま、いつも楽しみにしてくださって、励みになっています。
どうもありがとうございます。
All Aboutには、15年前、わたしにAll Aboutパンという場をまかせて
くださったことに、今でも心から感謝しています。
Red Ball Japanでは、15周年を記念して15の表彰がありました。
「記事のお手入れマメで賞」(ウェブではこの作業がだいじ)や
「Googleに愛されたで賞」や、「最優秀新人ガイド賞」など。
わたしはなんと「ガイドが選ぶ、尊敬するガイド」賞をいただきました。
選んでくださった皆さま、ありがとうございました。
この名誉に恥じぬよう、精進します。
これからもどうぞ、よろしくお願い申し上げます。
今流に提案された伝統に気軽に触れられる場所
Let's ENJOY TOKYOで、日本橋をご案内しました
(パンのお話はここでは少しだけです)。
東京メトロ134駅で現在配布中のフリーペーパー
『TOKYO TREND RANKING』に掲載されています。
一部、Let's ENJOY TOKYOのサイトでもご覧いただけます。
Let's ENJOY TOKYOは東京のオデカケをテーマにしたサイトですが、
そこでキュレーターを務めることになったとき、最近気に入っている
オデカケの場所として日本橋を挙げていました。
日本橋は、今流に提案された伝統に気軽に触れられる場所です。
きものがすきで、週に一度はきもので過ごしています。
パンとの関連性は、伝統と職人技かな。
Let's ENJOY TOKYO
『清水美穂子のBread+something good in Tokyo』
仁瓶さんのリュスティック
インタビューを受けたときに、すきなパンは、と聞かれたので、
職人の人生が透けてみえるようなパン、と答えたあと、
ドンクですきなパンは、と聞かれたので、
仁瓶さんの焼いたロデヴやリュスティック、と答えた。
かぐや姫の願い事か。
なかなかたべられないものだ。
希少だから情報誌なら却下されてしまうにちがいない回答だ。
しかし、今回はよくある「オススメコメント」とは異なり、
わたし個人をクローズアップするインタビューだったので
ライターさんがうまく記事にしてくださった。
インタビューはいつもする立場であって、されることはすくない。
得意ではないが、逆の立場というのは勉強になるとわかった。
話したことと違う文章になっていると、衝撃を受ける。
自分もそんな思いを相手にさせてはいまいか。
いそいでなおしながら、がっかりしている自分がいる。
伝える仕事をする者として、伝えるの力がなかったのだ
という事実を、つきつけられることになるから。
そうした経験も、有り難いことだとおもう。
記事を読まれた仁瓶さんが、奇跡のように連絡をくださった。
あまりたべる機会ないでしょ、こんど焼くから、都合がついたら
取りにきて、と言ってくださったので、飛んで行った。
リュスティックは、記憶の通り、素晴らしい味がした。
それは細長く焼いたものだった。クラストは薄くパリッと焼けて
水分をたっぷり湛えた半透明の気泡を持つクラムを包んでいた。
もっちりとしていながら、どこまでも軽やかで、口の中で甘く、
やがて儚く溶けた。
1954年にレイモン・カルヴェル教授が伝えたというバゲットは
『Bon Painへの道』でも紹介されている。
それもまた、冷凍保存する間もなく、夢のように消えてしまった。
すごくトクベツな素材を使っているわけではないのに、トクベツなパン。
それは原材料の産地や銘柄、配合や製法だけによるものではないだろう。
職人の技によってトクベツになるのだ。
まえにリュスティックをたべたのは、出版記念の集まりのときだった。
ドンク仁瓶利夫と考えるBon Painへの道: Bread Journal
今回インタビューしていただいた記事
『月の本棚』清水美穂子のBread-B
パン屋さんっぽくないル・プチメックのサイトで、
ブレッドジャーナリストっぽくないコラムの連載が始まりました。
http://lepetitmec.com/archives/author/mihoko/
最初に話をいただいた時のこと。
何を書いてもよいけれど、禁止事項はル・プチメックのパンの話
と聞いて、ル・プチメックのパンは個人的にすきなので、
その魅力についてならいくらでも語れるのにな、とおもったけれども、
求められていることはべつにあった。
サイトをみると、素敵なウェブマガジンになっている。
ル・プチメックの隊長、西山逸成さんの書くことはもちろん、スタッフも
さまざまな執筆者のコラムもおもしろい。
ここは、ル・プチメックの隊長、西山逸成さんの+something goodの場所なのだ。
西山さんは読書家だ。読書好きは忙しくても食事をするみたいに本を読む。
西山さんとは昔から、読んだ本の話をよくするので、
それならわたしは本について書こうと考えた。
わたしは空を眺めるように本を読む。
書く場所がまたひとつ、できてしあわせです。
山のパン屋さん
一日、冬休みをいただいて河口湖へ。
伊豆箱根方面に行く時にブレッド&サーカスに寄るような感じで
あきる野のラ・フーガス経由で。久しぶり。
そして河口湖の帰り道……
山道で、小さな看板を見つけて引き返す。
なんとなく惹かれたので、車を降りて、敷地に入っていくと、
パン屋さんも、レストランもクローズしているようだ。
すると、店主らしき男性が店の中から出て来る。
そのひとはこの店のシェフで、なぜいまクローズしているかの話になり、
きょうはこの家にとってどんな日かの話になり(素敵な話だった)、
いつの間にか店に招き入れられ、パンを焼くマダムも帰ってきて、
夫の料理にあわせるパンを焼くために、レイモン・カルヴェル先生の本で
勉強したのだと教えてくれた。
そして、お店はクローズしていたのに、わたしの手にフランスパンが1個。
通りすがりだったのに、なんて親切な。
こういうのは、予定のない旅のおもしろさだ。
春には再開されるというので、次の機会にはきっと伺おう。
パンは翌日焼いてたべた。2日は経っているのに香ばしくて旨みのある、
料理のためのパンだった。
クロナッツの次なるハイブリッドスイーツ
マンダリン オリエンタル 東京のグルメショップで
新しいパンに出合う。
MO Cruffin(Mandarin Oriental Croissant Muffin)
ドミニクアンセルベーカリーのクロナッツ(クロワッサンドーナツ)
みたいなハイブリッドスイーツ、その名もクラフィン(クロワッサンマフィン)。
クラフィンはクロワッサン生地をマフィン型で焼いている。
焼き上がったら、クリームを絞ったりトッピングを施したり。
いま、ラズベリーカスタード(ラズベリージャムとカスタードクリーム)
プラリネ(キャラメリゼしたヘーゼルナッツクリーム)
コーヒー(コーヒークリームとクリームチーズフォンダン)
があるが、バリエーションは無限大にちがいない。
クラフィンはサンフランシスコ発祥。
マンダリン オリエンタル 東京は、バブカといい、他ではなかなかみかけない
スペシャリテがいくつもあって、目が離せない。
ブーランジェリーレカンにも、ベーカーズマフィンなるものがあった。
ベーカーズマフィンはブリオッシュだ。
お洒落の達人がドレスダウンするように、伝統的なフレンチ一辺倒だった
パン職人たちが、その技術をもってアメリカンアイテムに臨んでいる。
自由に、ますます洗練されて。